消費税の課税事業者・免税事業者
事業を行っていると、消費税を預かり、預かった消費税を納付する義務が発生します。消費税を納付する義務がある個人事業者、法人を消費税の課税事業者といいます。
この義務にはいくつか要件があり、一定の小規模な事業者については、その消費税の納税を免除される場合があります。これを消費税の免税事業者といいます。
今回は、この消費税の課税事業者、免税事業者について簡単にご説明いたします。
(1)課税事業者とは
消費税の課税事業者となるのは次のいずれかに該当する場合です。
① 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている
② 特定期間の課税売上高及び給与支払額が1,000万円を超えている
③ 1,000万円以上の資本金で法人を新しく設立した
④ 消費税課税事業者選択届出書の提出をしている
基準期間とは、個人事業者の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度をいいます。
特定期間とは、個人事業者はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間、法人はその事
業年度の前事業年度の上半期の期間をいいます。
課税売上高とは、国内で事業として対価を得て行う資産の譲渡や役務の提供をいい、このう
ち非課税取引(土地の譲渡など)や免税取引(商品の輸出など)に該当するものは含みません。
基準期間に免税事業者であった場合の課税売上高には、消費税が含まれていないので、その
期間の課税売上高の計算時には税抜きの処理を行う必要はありません。
(2)免税事業者とは
消費税の免税事業者となるのは次のすべてに該当する場合です。
➀ 基準期間の課税売上高が1,000万円以下である
② 特定期間の課税売上高または給与の支払額が1,000万円以下である
③ 設立から2年以内の法人で、資本金の額または出資の金額が1,000万円未満である
④ 消費税課税事業者選択届出書を提出していない
基準期間とは、個人事業者の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度をいいますので、
個人事業者の新規開業年とその翌年、法人の設立事業年度とその翌事業年度は課税売上高がなく原則として免税事業者になりますが、これ以外にも②から④の要件を満たす必要があります。
※このほかに、相続・合併・分割等があった場合の免除の特例により課税事業者となる場合があります。
(3)消費税が還付される場合
消費税は、事業者が預かった消費税から支払った消費税を差し引いて計算しますので、会社の利益が赤字の場合でも納付になることがあります。
逆に、支払った消費税が、預かった消費税より大きい場合には還付になることがあります。
・ 開業時などで、売上はまだ少ないが経費の支払いが多かった場合
・ 不動産の購入や多額の設備投資を行った場合
・ 輸出業者で、売上に消費税が課されないが仕入にかかる消費税を支払っている場合
還付を受けることができるのは、その事業者が課税事業者であり、その消費税額を原則課税で計算している場合に限ります。免税事業者であっても、あえて課税事業者となることで消費税の還付を受けることができます。
免税事業者が課税事業者となるためには、その適用を受けようとする年又は事業年度の初日の前日(新規開業年又は設立事業年度であればその末日)までに課税事業者選択届出書を提出しなければなりません。
ただし、一度選択すると2年間は課税事業者となります。1年目は還付で、2年目は納付となることもあるので注意が必要です。
(4)原則課税と簡易課税
消費税は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて計算するのが基本です。これを原則課税といいます。
原則課税に対し簡易課税とは、課税期間の前々年または前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下で、期限までに簡易課税制度選択届出書を提出している事業者が受けられる特例です。これは、原則課税のように実際に預かった消費税から支払った消費税を差し引くのではなく、預かった消費税に、業種によって決められた一定率(みなし仕入率)を乗算した額を支払った消費税とみなして納税額の計算を行うことができるものです。
ただし、簡易課税では、預かった消費税額からのみ納税額を計算するため、預かった消費税額を支払った消費税額が上回った場合でも、超えた分が還付されることはありません。
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