退職所得
退職金は税法上「退職所得」と呼ばれます。この意味での退職金は、退職時に特別に支払われる一時的な賃金のことです。 定年退職や転職等により退職金の支払いを受けた場合はもちろん、解雇予告手当を受け取った場合や、勤めていた企業の倒産により定期賃金や退職金が未払の場合に、その一部を未払賃金立替払制度により国から受け取った場合も「退職所得」に分類されます。 在職中に受け取る賃金や賞与等は「給与所得」になりますが、定年退職後引き続き同じ企業で再雇用される場合や役員に就任した場合に受け取る退職金は「退職所得」となります。あとで見るように退職金の所得税の計算には独自の計算式を用いるため、退職金なのか通常の賃金なのかをはっきりさせておく必要があります。
なお、退職金を受給する際、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、勤務先が所得税額及び復興特別所得税額、および住民税を計算し、退職金から源泉徴収してくれます。したがって、原則として確定申告は必要ありません。
(1)退職所得の計算方法 退職所得には所得税と住民税がかかります。 したがって退職金の総額からこの2つの税金が差し引かれた金額を受け取ることになります。 税金がかかることには違いありませんが、退職金には長年のご褒美と老後の生活の為に支給される一時金という2つの意味合いがある為、優遇された税制となっています。 課税対象になる退職所得の金額の計算は、次のように行います。
課税退職所得金額=(退職金の収入金額-退職所得控除額)×2分の1 |
計算式のうち「退職所得控除額」の計算方法は以下となります。
勤続年数に端数がある場合は数日でも1年と計算します。例えば、勤続年数が12年と1日だった場合は13年となります。 また、控除額が80万円に満たない場合には最低80万円の控除が受けられます。
例えば勤続1年の場合、上記の計算式では40万円ですが、80万円の控除を受けることができるということです。 なお、勤続年数が5年以下の法人役員等については上記計算式の「1/2」を適用することができません。さらに令和3年度の法改正で、令和4年1月1日以降は法人役員以外であっても勤続年数が5年以下であれば「1/2」を適用することができなくなりますので注意が必要です。
(2)退職所得の「所得税」の計算方法
退職所得の所得税を計算する時は、原則として他の所得とは分離(分離課税)して計算します。(1)で計算した課税退職所得金額に次の税率にて算出します。
(3)退職所得の「住民税」の計算方法
住民税とは居住地の都道府県と市区町村に納める、2つの地方税を合計したものです。
退職所得控除額、および課税退職所得金額は所得税の場合と同じです。 住民税の税率は以下のようになっています。
|
退職所得には、所得税や復興特別所得税、および住民税(上記(A)及び(B))がかかります。 税金が増えてしまわないように、退職金まわりの税金の仕組みや計算方法などを退職金を受領する前にしっかりと理解しておく必要があります。
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