約束手形が2026年に廃止
約束手形については、2024年11月から決済日数を120日から60日への短縮を適用し、2026年を目途に利用を廃止することを経済産業省が公表しています。 決済方法も電子化が進み、紙媒体の手形を使った支払いは利用が少なくなっているものの、まだ商慣習として残っている業界もあります。長年の慣習で手形取引を続けていたものの、実際に廃止されることになれば仕事への影響や対応方法などに不安を感じる経営者もいることでしょう。そこで、約束手形が廃止される理由や、廃止後の対応方法について解説していきます。
(1)約束手形 約束手形は、振り出し時点ではお金がないものの、期日には支払うことを約束する有価証券です。 支払い期日を先延ばしでき、利子の負担もないことがメリットといえます。しかし、支払い期日に決済できなかったときに「不渡り」になることがデメリットです。半年以内に2回「不渡り」を出してしまうと、実質的な倒産状態となるため注意が必要です。
(2)約束手形が廃止される理由
理由1.受取人の負担が大きい 約束手形が廃止されるのは、受取人の経済的負担が大きすぎるからです。 企業間の商取引においては、一定期間を取りまとめて請求した金額が後日入金されます。請求書に記載された金額が期日に現金で支払われる場合でも、1~2か月待たなければ決済されません。期日に現金による支払いではなく、手形を使った決済が利用されると支払期限をさらに引き延ばすことができるため、発注側は資金繰りが楽になるのに対し受注側は資金繰り悪化のリスクが高まります。 約束手形の支払い期日は最長120日後に設定可能とされてはいるものの、下請法などで遅くても60日以内に決済しなければなりません。しかし請求書に記載された期日からさらに60日延長されると、受注者は資金面がかなり厳しい状況に追い込まれる可能性があります。 加えて、支払い期日より前に約束手形を売却する割引手形なら現金化はできますが、割引料の分だけ手元に残る金額も減ってしまいます。そもそも審査に通らなければ手形割引自体を利用できない点にも注意が必要です。 また受取手形は紙でできています。会社内で支払い期日まで保管しておくなどの事務負担がある上に、盗難・紛失などのリスクも高いと言えます。
理由2.時代の流れに合っていない 約束手形が廃止されるのは、様々な業界でデジタル化が進む中、紙媒体の決済方法が時代の流れに合っていないからといえます。 世界的でも約束手形を活用している国はごくわずかであり、紙を決済手段として使用することによるコストも懸念されます。経済のあり方なども変貌している中、紙媒体の約束手形を利用するビジネスは時代の流れに合っていないといえるでしょう。
(3)企業への影響と今後の対応 国として約束手形をやめる方向で進んでいるのは、企業にもさまざまな影響を及ぼしています。経済産業省では、企業に対し現金振込への移行を推奨しています。現金化までの期間を短縮できるからです。 また、現金振込への移行が難しい企業に対しては、電子記録債権(でんさい)の利用を求めています。でんさいとは、手形・指名債権(売掛債権等)の問題点を克服した金銭債権です。専用のネットワーク(でんさいネット)上で発生、譲渡、決済の記録を行うだけで、取引先への支払いができる仕組みと考えましょう。 今後はインターネットバンキングやでんさいなど、電子決済が多くなる可能性が高く、企業にも決済手段の電子化を前提にした対応が求められます。
(4)電子記録債権(でんさい) 電子記録債権(でんさい)とは、約束手形にかかる手続きを簡素化するために創設された金銭債権のことです。電子記録債権記録機関の記録原簿への電子記録が発生・譲渡の要件となります。 つまり、これまで行っていた約束手形の振り出しや呈示、支払い期日を迎えてからの入金をすべてネットワーク上で行うシステムと考えることができます。 電子記録債権の場合、譲渡には電子記録が必要となるため二重譲渡のリスクがない点が大きなメリットです。 また、権利内容が電子的に記録されるため、紙の手形のように管理にかかるコストが軽減され、盗難や紛失のリスクも解消されます。 なお、でんさいを使いたい場合は、取引銀行へ申し込み、審査を受けなくてはいけません。
支払側 |
✔ ペーパーレスだから手続きが楽!送付費用もゼロ ✔ 印紙税は課税されません ✔ 支払手段の一本化で効率的 |
受取側 |
✔ ペーパーレスだから保管も不要 ✔ 必要な分だけ分割して譲渡や割引ができる ✔ 入金期日に自動入金されるので取引手続き不要 ✔ 債権を有効活用でき資金繰りに役立てられる |
支払いまでの期間を延ばせる決済手段として、これまで約束手形は広く使われてきました。しかし、事務処理が煩雑だったり、実際に現金が受け取れるまで長かったりなど使い勝手が劣る部分もあります。2026年を目途に約束手形は廃止が検討されているため、企業もその前提で対応を進めなければなりません。電子決済を導入するのも対応の一環です。導入により決済にかかる事務を効率化ができることもメリットでしょう。
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