固定資産の減価償却
備品等の購入や修繕などを行った場合には、それが固定資産になるのか、費用になるのかの判断が重要です。この判断を誤ると税額にも影響がでます。 固定資産とは、使用可能期間が1年以上かつ取得価額が10万円以上の備品等を購入した場合には固定資産として計上する必要があります。 また、修繕などを行った結果、固定資産の使用可能期間の延長または価値の増加をもたらす等の積極的な支出(資本的支出)に該当する場合にも固定資産として計上する必要があります。
(1)減価償却
減価償却できる資産を「減価償却資産」と呼び、該当するのは事業で使われる建物・建物附属設備・機械装置・器具備品・車両運搬具などです。この減価償却資産は、年月の経過等とともに劣化し、その価値が下がる物が対象です。土地や骨董品など、年月の経過によって価値が減少しない資産については減価償却資産に含まれません。 減価償却とは、業務に用いる固定資産の取得費用を使用可能な期間で分配、経費として計上する手続きです。減価償却資産の取得に要した金額を、一度にすべて経費として計上するのではなく、定額法や定率法などで各年分の必要経費として配分することで、毎年の正確な損益を把握できるようになります。
(2)法定耐用年数
減価償却資産を業務に利用できる耐用年数は税法で定められています(法定耐用年数)。例えば、測定工具の法定耐用年数は5年、事務机のうち金属製は15年、金属製以外の事務机は8年、小型自動車は4年、自転車は2年です。減価償却する際は、法定耐用年数を参考に計算してください。なお、法定耐用年数は国税庁のホームページから確認できます。
(3)減価償却の方法
選択できる減価償却の方法は資産の区分に応じて、次のように決められています。 (2016年4月1日以後に取得した資産)
・建物 :定額法 ・建物附属設備及び構築物 :定額法 ・機械及び装置、船舶、航空機、 車両運搬具、工具器具備品 :定額法または定率法 ・鉱業用減価償却資産 (建物、建物附属設備及び構築物) :定額法または生産高比例法 ・鉱業用減価償却資産 (上記以外) :定額法、定率法または生産高比例法 ・無形固定資産及び生物 :定額法 ・鉱業権 :定額法または生産高比例法 ・リース資産 :リース期間定額法 |
なお、法人の場合、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具並びに器具及び備品については、定率法が法定償却方法として予め決められており、何もしなければ決められた方法を適用しなければなりません。それ以外の方法を採用する場合には、「減価償却資産の償却方法の届出書」を税務署に提出します。 「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出期限は、新たに法人を設立したときは設立第1期の申告書の提出期限まで、設立後既に償却方法を選定している減価償却資産以外の減価償却資産を取得した場合は 、その資産を取得した期の申告書の提出期限まで、となります。
(4)一括償却資産
取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産で、一括して償却することとした資産を一括償却資産といいます。これを事業の用に供した場合には、下記の算式で計算した金額を損金の額に算入することができます。
事業年度に事業供用した一括償却資産の取得価額の合計額 × 事業年度の月数/36
その事業年度中の一括償却資産の取得価額の合計額を3年間で損金に計上することになります。たとえば、一括償却資産を年間で120万円購入した場合には、この120万円を3年で割って、1年間に40万円ずつ損金に算入することができます。 取得価額が10万円以上20万円未満であるかどうかは、通常1単位として取引されるその単位ごとに判定します。
(5)少額減価償却資産の特例
中小企業者等が30万円未満の什器、備品などを購入した場合には、その全額を損金の額に算入することができます。下記の要件を満たす必要があります。
①資本金1億円以下で青色申告書を提出する中小企業等(ただし、常時使用する従業員の数が 500人を超える法人、連結法人、前3事業年度の平均所得が年15億円を超える法人を除く) ②平成18年4月1日から令和6年3月31日の間に取得し事業の用に供すること ③取得価額30万円未満 ④1年間の総額が300万円まで ・利用可能な税目・・・すべての税目(源泉所得税自主納付分を除く) |
減価償却すると節税につながり、損益を正確に理解できるメリットがあります。ただし、減価償却の対象とならない固定資産もあり、計算方法にも種類があるため、正しい知識を身に付けておくことが重要です。
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