年末調整(令和5年分)の変更点
年末調整とは、企業が従業員(給与所得者)のために行う制度のことで、1年間で源泉徴収された所得税額を再計算し、税額との差異を調整した上で所得税を確定させるものです。 従業員は、月々の給与や賞与が企業から支払われますが、給与や賞与は必ず「所得税」が天引きされています。 これを「源泉徴収」といいますが、毎月天引きされている所得税は一律の税率で導き出されたものなので、一人ひとりの従業員の具体的な税負担額とは差異が生じている可能性があります。年末調整は、このような差異を解消するために行う手続きです。 その年の1月1日から12月31日までの給与が確定した時点で、給与所得や所得税、控除額等を確認し、源泉徴収税額の差異を計算します。この計算で、源泉徴収時に過払いがあれば還付を行い、不足があれば新たに徴収が行われます。 今回は、令和5年年末調整の3つの変更点について解説します。
(1)非居住者である扶養親族に係る扶養控除の適用要件
令和2年税制改正により、扶養控除の対象となる扶養親族の範囲変更が、令和5年から適用されます。扶養控除の対象となる扶養親族の範囲が、「16歳以上の非居住者」のうち、「30歳から69歳までの非居住者」が除外されました。
ただし、「30歳以上69歳以下」でも下記に該当する場合は今までどおり対象となります。
1.留学で非居住扶養親族になった人 2.障害者 3.その年に扶養者(親など)から38万円以上、生活費や教育費をもらっている
1.に該当する場合は、扶養控除等申告書の受領時に留学ビザ等の相当書類と送金関係書類を、2.に該当する場合は年末調整時に38万円以上の送金を証明する確認書類を提出し適用対象者である証明を行う必要があります。
(2)「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄の追加
令和5年から「扶養控除等(異動)申告書」の様式が変更され、「住民税に関する事項」についての記載は、令和4年までは「16歳未満の扶養親族」についてのみでしたが、改正により、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」と「寡婦又はひとり親」の記載が追加されました。 これは、退職所得における、所得税と住民税の計算の考え方が異なることに起因しています。扶養控除や配偶者控除の適用を受ける場合は、配偶者等の合計所得金額が48万円以下である必要があります。 ただし、所得税の計算では、退職所得は合計所得の額に含めますが、住民税の計算では退職所得の金額は含めません。 上述した通り、住民税では控除適用を受けることができるにもかかわらず、適用されていないケースが多かったため、今回追記されることとなりました。
(3)住宅ローンの控除率、控除期間等の見直し
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、住宅ローンなどを利用してマイホームを新築、増改築した際に受けられる税制優遇措置です。「令和4(2022)年以降に新たに住宅を新築した場合」の住宅借入金等特別控除について、適用期限と控除率、控除期間が見直されました。 この変更の背景には、2050年カーボンニュートラル実現に向けた対策や、社会環境の変化などに対応した豊かな住生活の実現に向けて、住宅の省エネ性能向上・長期優良住宅の取得推進といった目的があります。 令和3年度の税制改正では、控除期間を13年にする特例措置が延長されました。
出典:財務省 パンフレットPDF「令和3年度税制改正」より
令和4年度は、この措置を令和7年末まで延長することになり、合わせて控除率、控除期間などが次のように見直されました。 改正内容の概要はこちらです。 ・住宅ローン控除の適用期限が4年延長。※2022年~2025年12月末までに入居した者が対象。 ・控除率が1%から0.7%に引き下げ。 ・住宅ローン控除の適用対象者の所得要件が、合計所得金額3,000万円以下から2,000万円以下 に引き下げ。 ・合計所得金額1,000万円以下の者につき、令和5(2023)年以前に建築確認を受けた新築住宅 の床面積要件が40平米以上に緩和。
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