年末調整の留意事項 と手順
1.年末調整の留意事項
会社では、従業員・雇用主様個人の年末調整を実施する必要があります。年末調整の留意事項についてご説明いたします。
(1)年末調整とは
毎月の給与にかかる源泉所得税は、毎年1月1日現在の控除対象扶養親族に基づき、所定の源泉徴収税額表に基づき算定され、徴収されております。しかしながら、下記の要因により、年間の給与総額に基づく年税額と一致しないのが一般的です。
① 源泉徴収税額表
源泉徴収税額表は、年間を通して毎月の給与額に変動がないものとして作成されていますが、
実際は年度の途中で給与の額に変動があること
② 控除対象扶養親族
控除対象扶養親族の数などに異動があっても、その異動後の支払分から修正するのみで、遡っ
て各月の源泉徴収税額を修正することとされていないこと
③ 保険料控除
生命保険料や地震保険料の控除などは、年末調整の際に控除すること
とされていること
上記のような不一致を精算するため、1年間の給与総額が確定する年末にその年に納めるべき税 額を正しく計算し、それまでに徴収した税額との過不足額を求め、その差額を徴収又は還付して精算 する必要があります。
このような精算手続きを「年末調整」と呼んでいます。これにより給与以外に所得がないような従業員にとっては、確定申告を行う必要がなくなるため、年末調整は非常に重要な手続きであるといえます。
(2)年末調整の対象者
年末調整は基本的には12月に行われます。年末調整の対象となる人は「1年間を通じて勤務している人」、「年の途中で就職して年末まで勤務している人」になります。
「給与収入の総額が2,000万円を超える人」や、「災害減免法の規定で、給与に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人」、「2ヵ所以上から給与の支払いを受けている人で、他の給与の支払者に申告書を提出している人」など一部の人は対象外です。
また、年末調整までに必要な書類を提出していない人は自分で確定申告をする必要があります。
(3)年末調整の留意事項
① 配偶者控除及び配偶者特別控除
配偶者控除の適用について、H30年度より改正され、 合計所得金額が1,000万円を超える所得者については、配偶者控除及び配偶者特別控除の適用を受けることはできないこととさ れました。合計所得金額が900万円超1,000万円以下の場合には、配偶者控除及び配偶者特別控除の適用は段階的に引き下げられます。また、配偶者特別控除については、対象となる配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下とされ、所得者の合計所得に応じて控除額が変動することになります。
② 給与所得者の配偶者控除等申告書の改正
平成29年分の「給与所得者の配偶者特別控除申告書」は、平成30年分より「給与所得者の配偶者控除等申告書」に変更となりました。これに伴い、平成29年分の「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告 書」(兼用様式)については、平成30年分は、「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」の2種類の様式とされました。
③ 給与所得者の扶養控除等申告書等の様式変更
平成29年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」については、「控除対象配偶者」を記載することになっていましたが、平成30年分の各様式については、「源泉控除対象配偶者」を記載することとされました。
(注)1 源泉控除対象配偶者とは、所得者(合計所得金額が900万円以下である人に限りま す。)と生計を一にする配偶 者で、合計所得金額が85万円以下である人をいいます。
2 同一生計配偶者に係る障害者控除の適用を受けるには、「平成30年分 給与所得者の扶養控 除等(異動)申告書」 に必要事項を記載して給与の支払者に提出する必要がありますので、ご注意ください。
2.年末調整の手順
年末調整を始めるまでには、従業員から前項で記載している書類を集めることから始まります。従って、早めに従業員に対して書類の提出を徹底していただく必要があります。
(1) 所得控除及び税額控除
年末調整において所得控除ができる項目は以下の11項目があります。
①基礎控除 ②配偶者控除 ③配偶者特別控除 ④扶養控除 ⑤障害者控除 ⑥寡婦(寡婦)控除
⑦勤労学生控除 ⑧社会保険料控除 ⑨生命保険料控除 ⑩地震保険料控除 ⑪小規模企業共済掛金
また、税額控除は、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)があります。
(2) 扶養控除等申告書の確認
平成30年分の年末調整では、配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けようとする場合に、「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出しなければならないこととされました。したがって、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」 の「源泉控除対象配偶者」欄への記載の有無にかかわらず、配偶者控除又は配偶者特別控除については、「給与所得者の配偶者控除等申告書」の提出を受ける必要があります。
控除対象扶養親族や障害者などに該当するかどうかは、年末調整を行う日の現況により判定しま すが、その判定の要素となる①合計所得金額は、年末調整を行う日の現況により見積もった本年1月1日から12月31日までの合計所得金額により、 ②年齢は、本年12月31日(所得者本人やその親族が年の中途で死亡したり、所得者本人が年の中途で出国して非居住者となる場合には、その死亡又は出国の時)の現況により判定します。
(3) 年調年税額の算定
給与額から「給与所得控除後の給与等の金額」の計算を算定し、これを基礎として、平成30年分の最終的な年税額(以下、「年調年税額」といいます)を求める具体的な計算に入ります。
年調年税額は、次の算式に示すような計算を経て求められます。
(4) 過不足額の精算
本年分の給与所得に対する年調年税額の計算の終了後、その年調年税額と、既に集計した本年分の毎月の徴収税額の合計額とを比べて過不足額を求め、その精算をする必要があります。徴収税額の合計額が年調年税額よりも多いときは、その差額分だけ納め過ぎていたことになるため、その差額(過納額)は、その過納となった人に還付します。これに対し、徴収税額の合計額が年調年税額よりも少ないときは、その差額だけ納め足りないことになるため、その差額(不足額)はその不足となった人から徴収する必要があります。年末調整の計算が終わり、過納額や不足額の精算をした場合には、その内容を年末調整をした月分の所得税徴収高計算書(納付書)に記載した上、徴収税額を納付します。
お知らせの最新記事
- インボイスの特例についての解説動画を公表
- インボイス制度における立替払いの処理
- 令和5年度 査察の概要を公表
- 子育て世帯等に対する住宅ローン控除の拡充
- 定額減税の扶養親族に変更があった場合等の減税額の計算
- 退職金
- 定額減税の対象となる源泉所得税、ならない源泉所得税
- 所得税の非課税とされる給与
- 源泉所得税の定額減税の対象者について
- 中小企業向け賃上げ促進税制
- 申告書等の控えへの収受日付印の押なつが廃止されます
- 約束手形が2026年に廃止
- 財産債務調査制度の見直しのポイント
- 定額減税[令和6年度の税制改正大綱]:住民税
- 「令和6年能登半島地震」に係る国税の申告・納付等の期限を延長
- 定額減税[令和6年度の税制改正大綱]
- 帳簿保存のみの保存で仕入税額控除が認められる取引
- 2024年提出(令和5年分)の確定申告の変更点
- 令和5年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引き
- 2024年1月からの電子帳簿保存法改正による変更点
- 事業所得者のための決算のポイント
- 贈与税と相続税(税制改正)
- インボイス制度で変わる経費精算のルール
- 年末調整(令和5年分)の変更点
- インボイス制度で変わる経費精算のルール
- インボイス制度の概要
- 令和5年度税制改正 個人事業者の各種提出書等の見直しについて
- インボイス制度(独占禁止法・下請法の観点からの留意点)
- 枚方市エネルギー価格高騰対策緊急支援金
- 交際費
- インボイス制度導入目前!要点のおさらい
- 繰延資産の取扱い
- インボイス制度導入目前!要点のおさらい
- 役員報酬
- 法人事業概況説明書・会社事業概況書の記載要領の変更について
- 電子帳簿保存法の新たな要件緩和措置
- 令和5年度税制改正について
- 令和5年度税制改正大網
- 令和5年度の個人課税に影響する改正項目
- 医療費控除
- 地方税務手続のデジタル化
- 確定申告
- 事業所得者のための決算のポイント
- 住民税
- 事業所得者のための決算のポイント
- 所得金額調整控除
- 新年明けましておめでとうございます
- 令和4年分確定申告からの新機能等を公表
- 所得控除
- 令和3年度の租税滞納状況を公表
- 電子帳簿等保存制度(2022年1月の改正ポイント)
- 令和4年分の路線価図等を公表
- 消費税インボイス制度の免税事業者への影響
- 令和4年度税制改正について
- 固定資産の減価償却
- 令和4年度税制改正について
- 国税のキャッシュレス納付
- 法人関係の税制改正について
- 所得拡大促進税制
- 育児・介護休業法の改正について
- 生前贈与の「暦年課税」
- 育児・介護休業法の改正について
- 退職所得
- 住宅ローン控除の見直し
- 土地建物の譲渡所得の計算
- コロナ克服・新時代開拓のための経済対策について
- 2022年(令和4年)提出分 確定申告
- 暗号資産
- 年始の提出書類
- 年末調整手続きの電子化について
- 事業復活支援金
- 電子帳簿保存法改正のポイント
- 2021年度税制改正における2021年の年末調整変更点
- セルフメディケーション税制の見直し
- 生命保険での節税対策
- 令和3年分の路線価図等を公表
- 資本的支出と修繕費
- 納税環境の整備
- 資金繰りのポイント
- 退職所得課税の改正点
- 事業承継・引継ぎ補助金
- 事業再構築補助金の申請受付がスタート
- 月次支援金
- ものづくり補助金 「低感染リスク型ビジネス枠」
- 事業譲渡の税務
- 総額表示義務について
- 一時支援金
- 令和3年度税制改正の大綱
- 事業再構築補助金
- 個人事業者の確定申告のポイント
- 融資の審査のポイント
- 令和3年1月以降の「ひとり親」・「寡婦」の源泉徴収の取扱い
- 【消費税】 インボイス制度
- 事業所得者のための決算のポイント
- 給与支払報告書及び法定調書合計表
- 新年明けましておめでとうございます
- 年末調整の対象となる給与について
- 年末調整の主な変更点
- 令和2年度 新型コロナウィルス感染症 緊急経済対策による税制改正
- 新型コロナウイルスによる納税猶予・申告納付期限の延長制度
- 令和2年度 新型コロナウィルス感染症 緊急経済対策による税制改正
- 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金制度
- 令和2年度 新型コロナウィルス感染症 緊急経済対策による税制改正
- 家賃支援給付金制度
- 令和2年度 税制改正について (個人関係)
- 持続化給付金制度 (支援対象拡大)
- 新型コロナウイルス感染症 緊急経済対策における税制措置
- 助成金・支援金
- 持続化給付金制度(新型コロナウイルス感染症) 続き
- 持続化給付金制度(新型コロナウイルス感染症)
- 法人税申告のポイント(3月決算法人)
- 新型コロナウイルス感染症に係る資金調達
- 法人税申告のポイント(3月決算法人)
- 相続時精算課税制度
- 個人事業者の確定申告のポイント
- 所得税の確定申告
- 法定調書の作成と提出について
- 事業承継(第三者承継)
- 中小事業者の税額計算の特例について
- 年末調整と住民税
- 新年明けましておめでとうございます
- 新しい請求書等保存方式について
- M&Aメディア≪FUNDBOOK≫への寄稿のお知らせ
- 繰延資産の範囲と取扱い
- 消費税の軽減税率制度・新しい請求書等保存方式
- 年末調整関係書類 (令和2年に変更予定)
- 民法(相続法)改正
- 法人にかかる税制
- 補助金・助成金
- 法人事業税の税率の改正等
- 法人化(法人成り)
- ふるさと納税/商業・サービス業・農林水産業活性化税制
- 棚卸資産
- 【平成31年3月期】法人税申告のポイント
- 仮想通貨
- 金融検査マニュアルの廃止
- 年次有給休暇の時季指定義務
- 改正内容等
- 引当金
- 平成31年度税制改正
- 確定申告に関する基礎知識
- 法定調書の作成と提出について
- インボイス制度
- 新年明けましておめでとうございます
- 災害にかかる税制のポイント
- 事業承継税制の改正ポイント
- 災害にかかる税制のポイント
- 働き方改革関連法
- 平成30年度税制改正のポイント 【消費税の簡易課税制度の見直し】
- 消費税の軽減税率制度
- 2018.9 お客様の声
- 平成30年度税制改正のポイント 【源泉所得税関係の税制改正事項】
- 従業員に支給の食事・記念品と源泉徴収
- 平成30年度税制改正のポイント 【消費課税】
- 算定基礎届
- 夏季休業期間のお知らせ
- 平成30年度税制改正のポイント(個人)
- 建設業の社会保険加入
- 契約社員等の無期転換ルールについて
- 2018.5 お客様の声
- 平成30年度税制改正のポイント
- 2018.4 お客様の声
- 保証付融資
- ビットコイン(仮想通貨)
- 2018.3 お客様の声
- 2018.3 お客様の声
- 株式会社 vs. 合同会社
- 確定申告に関する留意点
- 2018.2 お客様の声
- 税制改正等(給与所得控除)
- Indeedの利用
- 年末調整の流れ
- 進化する人事労務
- 新年明けましておめでとうございます
- 税制改正等 (配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し)
- 2017.11 お客様の声
- 消費税の軽減税率制度
- 2017.10.13 T株式会社 O.T様
- 枚方 会社設立・起業相談オフィス HPがオープンいたしました