給与支払報告書及び法定調書合計表
前号においては年末調整の変更点を中心に解説をいたしました。今月号では、各市区町村に提出する給与支払報告書、及び税務署に提出する法定調書合計表について解説いたします。
(1)給与支払報告書
「給与支払報告書」とは、事業者が従業員の年間の所得を確定し、従業員が住んでいる市区町村に給与支払状況を報告する書類のことです。給与支払報告書には、「個人別明細書」と「総括表」で構成されています。 市区町村はこの書類をもとに新しい住民税額(本年6月~翌年5月まで)を算出するため、事業者は期限である1月31日までに必ず提出する必要があります。
① 個人別明細書
「個人別明細書」は、「源泉徴収票」と書式が非常に似ており、一年間の支払金額の総額や給与所得控除後の金額、所得控除額の合計額、源泉徴収税額などが記載されています。 各市町村は、この「個人別明細書」をもとに住民税額を計算し、「特別徴収税額通知書」を発行します。会社は当該通知書により、本年6月から個人の住民税を徴収します。
「個人別明細書」はA4サイズに左右2枚組になっており、市区町村に2枚送られた個別明細書は、 1枚は会社ごとに管理し、もう1枚は世帯ごとに管理されています。会社からの問い合わせに迅速に対応してもらうことができ、さらに従業員個人からの世帯に関する問い合わせの場合にも迅速に対応してもらえます。 なお、引越した場合、1枚は転出元の市区町村で保存し、もう1枚は転入先の市区町村で保管されるため、過去分の問い合わせにも対応できるようになっています。
個人別明細書の見本
② 総括表
「総括表」は「個人別明細書」を提出する時に一緒に提出する表紙を指します。給与支払報告書は各市区町村へ提出が必要となります。 個人別明細表が漏れなく各市区町村へ提出できるように、それぞれの市区町村ごとに何名の従業員がいるのかを記載して個人別明細書に添付します。例えばその会社に5つの市区町村に住む人がいれば、合計5枚の総括表を作成して各市町村に提出する必要があります。
総括表の見本
③ 退職者の特例
総括表の報告人数には、在職者の他に退職者の人数も記載する必要があります。 原則は、給与支払報告書を提出する年の1月1日時点に在職していない従業員であっても、前年中に給与の支払いがあった人については提出しなければなりません。
退職者に関する手続きの特例として、前年中に退職した方のうち、前年中の給与等の支払金額が30万円以内の方については個人別明細書の提出義務が免除されます。 在職したものの、住所が確認できないまま退職したような場合、給与支払総額が30万円以内であれば適用できるため、実務においては非常にありがたい制度となっております。
(2)法定調書合計表
法定調書とは、税法により税務署への提出が義務づけられている資料のことです。全部で60種類もの法定調書があります。 一般的に「合計表」と呼ばれている「法定調書合計表」は正式には「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」と呼ばれ、提出期限は、1月31日までとなっております。
「法定調書合計表」は文字通り「法定調書」を「合計」した「表」で、税務署が適正な課税を確保することを目的に6種類の取引について作成することが要請されております。 主な記載事項である、給与所得の源泉徴収票合計表、及び退職所得の源泉徴収票合計表について以下解説いたします。
① 給与所得の源泉徴収票合計表
給与所得者に対して1年間に支払った給与支払総額、人員、確定した源泉徴収税額を記載します。年末調整をした場合の源泉徴収票を提出する必要がある者は以下のとおりとなります。
(1)法人の役員(現に役員をしていなくても、その年中に役員であった者を含みます。)について は、その年中の給与等の支払金額が150万円を超えるもの。なお役員には、相談役、顧問その他これらに類する方も含みます。 (2) 弁護士、司法書士、税理士等については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの (3) 上記(1)(2)以外の者については、その年中の給与等の支払金額が500万円を超えるもの |
② 退職所得の源泉徴収票合計表
退職手当等を支払った場合に、人員、支払総額、源泉徴収税額を記載する必要があります。なお、退職所得の源泉徴収票を税務署に提出する必要があるのは、受給者が役員に限られます。
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