融資の審査のポイント
コロナウイルス感染症の影響で、資金繰りについて影響を受けている中小事業主は少なからずいるかと思います。資金調達には融資以外に補助金、助成金等もあります。しかしながら、直ぐに資金調達が必要な場合は、金融機関等からの融資となります。今月号では、金融機関が融資の審査をする上でのポイントについて解説いたします。
(1)スコアリングの流れ
金融機関は、中小事業主が融資を申し込んだ際、及び融資が実行された期以降の毎期に決算書(実際には税務申告書)の提出を求めます。新規の融資の申し込みの時は、3期分の決算書と試算表、融資を実行した以降は直近の決算書になります。 金融機関の担当者は、決算書を預かった後、決算書を本部に送り、分析を依頼します。 この分析は、決算書から機械的に定められた財務指標を算出し、それをもとにスコアリング(これを第1次評価という)を実施します。 次に第2次評価である定性評価、第3次評価である実態評価に進んで審査を行います。
銀行の格付
1.第1次評価(定量分析) ⇒ 財務諸表の評価 ⇩ 2.第2次評価(定性分析) ⇒ 中小事業主の外部環境・内部環境等の評価 |
上記のスコアリングのように、金融機関では3段階にわたって、あらゆる中小事業主の財務状況等を審査します。次に第1次評価(定量分析)について解説いたします。
(2)第1次評価(定量分析)
金融機関等は、会計上の財務分析の観点ではなく、融資した資金がきちんと回収できるかという観点から決算書を分析します。 その最初の第1次評価は定量分析と呼ばれ、財務諸表の評価となります。 この第1次評価のスコアで融資枠や利率等の条件が決定するため非常に重要となります。 安全性項目・収益性項目・成長性項目・債務返済項目の4つの観点から、下記の13の財務指標をもとに評価を実施します。
安全性項目
① 自己資本比率 ⇒ 純資産合計金額/総資本 ② ギアリングレシオ ⇒ 総負債(流動負債+固定負債) /純資産合計金額 ※負債の短期借入金及び長期借入金に含まれる役員借入金は純資産額に加算 ③ 流動比率 ⇒ 流動資産/流動負債 ④ 固定長期適合率 ⇒ 固定資産/(固定負債+純資産額合計金額) |
収益性項目
① 売上高計上利益率 ⇒ 経常利益/売上高 ② 総資本経常利益率 ⇒ 経常利益/総資本 ③ 収益フロー ⇒ 3期の経常利益がプラスかマイナスか |
成長性項目
① 計上利益増加率 ⇒ (当期経常利益額−前期経常利益額)/前期経常利益額 ② 自己資本額 ⇒ 純資産合計 ③ 売上高 ⇒ 評価年度の売上高 |
債務返済能力
① 債務償還年数 ⇒ (金融機関融資残高合計−所要運転資金) /(減価償却費+経常利益−法人税等) ② インスタントカバレッジレシオ ⇒ (営業利益+受取利息+受取配当金) / (支払利息+割引料) ③ 償却前営業利益 ⇒ 減価償却費+営業利益 |
上記の項目よりポイントをつけ、その合計ポイントで債務者区分を判定します。 純資産(自己資本)と営業利益と経常利益に関する項目が配点される割合が高いため、格付アップするためには、これらの項目を高くすることが重要となります。
(3)第2次評価(定性分析)
主に会社の外部環境、内部環境などを分析します。 例えば、会社の主要な取引先が安定した大手先である場合や、評価の厳しい銀行が取引銀行に含まれている場合等については評価が上がります。 会社が属している業界が斜陽産業の場合は、当該中小事業主に体力があっても融資が通りにくくなります。更に、決算書に銀行系リースや割賦以外の「ノンバンク」からの融資がある場合は、銀行の評価は厳しくなります。 代表者の資産状況や役員報酬なども加味され、個人の信用状況もチェックします。 金融機関において、これらの評価はバラツキがあるため、複数金融機関と取引し、適度な緊張感を保つことが銀行交渉を進めるうえで重要なポイントとなります。
(4)第3次評価(定量分析)
最終的に金融機関では提出された貸借対照表から本来の資産価値に置き換えた、「実態貸借対照表、損益計算書」を作成して返済能力を確認します。
帳簿価額と時価をみるポイント
✓売上債権 ☞ 不良債権等がある場合は回収できないもととして資産から控除します。 ✓商品等 ☞ 陳腐化、減耗等で販売に適さない商品等を不良在庫として資産から控除します。 ✓仮払金等 ☞ 何年も返済されていない経営者に対する仮払金・貸付金を資産から控除します。 ✓保有固定資産 ☞ 土地、ゴルフ会員権等、含み損がある場合はその部分を資産から控除します。 |
お知らせの最新記事
- インボイスの特例についての解説動画を公表
- インボイス制度における立替払いの処理
- 令和5年度 査察の概要を公表
- 子育て世帯等に対する住宅ローン控除の拡充
- 定額減税の扶養親族に変更があった場合等の減税額の計算
- 退職金
- 定額減税の対象となる源泉所得税、ならない源泉所得税
- 所得税の非課税とされる給与
- 源泉所得税の定額減税の対象者について
- 中小企業向け賃上げ促進税制
- 申告書等の控えへの収受日付印の押なつが廃止されます
- 約束手形が2026年に廃止
- 財産債務調査制度の見直しのポイント
- 定額減税[令和6年度の税制改正大綱]:住民税
- 「令和6年能登半島地震」に係る国税の申告・納付等の期限を延長
- 定額減税[令和6年度の税制改正大綱]
- 帳簿保存のみの保存で仕入税額控除が認められる取引
- 2024年提出(令和5年分)の確定申告の変更点
- 令和5年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引き
- 2024年1月からの電子帳簿保存法改正による変更点
- 事業所得者のための決算のポイント
- 贈与税と相続税(税制改正)
- インボイス制度で変わる経費精算のルール
- 年末調整(令和5年分)の変更点
- インボイス制度で変わる経費精算のルール
- インボイス制度の概要
- 令和5年度税制改正 個人事業者の各種提出書等の見直しについて
- インボイス制度(独占禁止法・下請法の観点からの留意点)
- 枚方市エネルギー価格高騰対策緊急支援金
- 交際費
- インボイス制度導入目前!要点のおさらい
- 繰延資産の取扱い
- インボイス制度導入目前!要点のおさらい
- 役員報酬
- 法人事業概況説明書・会社事業概況書の記載要領の変更について
- 電子帳簿保存法の新たな要件緩和措置
- 令和5年度税制改正について
- 令和5年度税制改正大網
- 令和5年度の個人課税に影響する改正項目
- 医療費控除
- 地方税務手続のデジタル化
- 確定申告
- 事業所得者のための決算のポイント
- 住民税
- 事業所得者のための決算のポイント
- 所得金額調整控除
- 新年明けましておめでとうございます
- 令和4年分確定申告からの新機能等を公表
- 所得控除
- 令和3年度の租税滞納状況を公表
- 電子帳簿等保存制度(2022年1月の改正ポイント)
- 令和4年分の路線価図等を公表
- 消費税インボイス制度の免税事業者への影響
- 令和4年度税制改正について
- 固定資産の減価償却
- 令和4年度税制改正について
- 国税のキャッシュレス納付
- 法人関係の税制改正について
- 所得拡大促進税制
- 育児・介護休業法の改正について
- 生前贈与の「暦年課税」
- 育児・介護休業法の改正について
- 退職所得
- 住宅ローン控除の見直し
- 土地建物の譲渡所得の計算
- コロナ克服・新時代開拓のための経済対策について
- 2022年(令和4年)提出分 確定申告
- 暗号資産
- 年始の提出書類
- 年末調整手続きの電子化について
- 事業復活支援金
- 電子帳簿保存法改正のポイント
- 2021年度税制改正における2021年の年末調整変更点
- セルフメディケーション税制の見直し
- 生命保険での節税対策
- 令和3年分の路線価図等を公表
- 資本的支出と修繕費
- 納税環境の整備
- 資金繰りのポイント
- 退職所得課税の改正点
- 事業承継・引継ぎ補助金
- 事業再構築補助金の申請受付がスタート
- 月次支援金
- ものづくり補助金 「低感染リスク型ビジネス枠」
- 事業譲渡の税務
- 総額表示義務について
- 一時支援金
- 令和3年度税制改正の大綱
- 事業再構築補助金
- 個人事業者の確定申告のポイント
- 令和3年1月以降の「ひとり親」・「寡婦」の源泉徴収の取扱い
- 【消費税】 インボイス制度
- 事業所得者のための決算のポイント
- 給与支払報告書及び法定調書合計表
- 新年明けましておめでとうございます
- 年末調整の対象となる給与について
- 年末調整の主な変更点
- 令和2年度 新型コロナウィルス感染症 緊急経済対策による税制改正
- 新型コロナウイルスによる納税猶予・申告納付期限の延長制度
- 令和2年度 新型コロナウィルス感染症 緊急経済対策による税制改正
- 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金制度
- 令和2年度 新型コロナウィルス感染症 緊急経済対策による税制改正
- 家賃支援給付金制度
- 令和2年度 税制改正について (個人関係)
- 持続化給付金制度 (支援対象拡大)
- 新型コロナウイルス感染症 緊急経済対策における税制措置
- 助成金・支援金
- 持続化給付金制度(新型コロナウイルス感染症) 続き
- 持続化給付金制度(新型コロナウイルス感染症)
- 法人税申告のポイント(3月決算法人)
- 新型コロナウイルス感染症に係る資金調達
- 法人税申告のポイント(3月決算法人)
- 相続時精算課税制度
- 個人事業者の確定申告のポイント
- 所得税の確定申告
- 法定調書の作成と提出について
- 事業承継(第三者承継)
- 中小事業者の税額計算の特例について
- 年末調整と住民税
- 新年明けましておめでとうございます
- 新しい請求書等保存方式について
- M&Aメディア≪FUNDBOOK≫への寄稿のお知らせ
- 繰延資産の範囲と取扱い
- 消費税の軽減税率制度・新しい請求書等保存方式
- 年末調整関係書類 (令和2年に変更予定)
- 民法(相続法)改正
- 法人にかかる税制
- 補助金・助成金
- 法人事業税の税率の改正等
- 法人化(法人成り)
- ふるさと納税/商業・サービス業・農林水産業活性化税制
- 棚卸資産
- 【平成31年3月期】法人税申告のポイント
- 仮想通貨
- 金融検査マニュアルの廃止
- 年次有給休暇の時季指定義務
- 改正内容等
- 引当金
- 平成31年度税制改正
- 確定申告に関する基礎知識
- 法定調書の作成と提出について
- インボイス制度
- 年末調整の留意事項 と手順
- 新年明けましておめでとうございます
- 災害にかかる税制のポイント
- 事業承継税制の改正ポイント
- 災害にかかる税制のポイント
- 働き方改革関連法
- 平成30年度税制改正のポイント 【消費税の簡易課税制度の見直し】
- 消費税の軽減税率制度
- 2018.9 お客様の声
- 平成30年度税制改正のポイント 【源泉所得税関係の税制改正事項】
- 従業員に支給の食事・記念品と源泉徴収
- 平成30年度税制改正のポイント 【消費課税】
- 算定基礎届
- 夏季休業期間のお知らせ
- 平成30年度税制改正のポイント(個人)
- 建設業の社会保険加入
- 契約社員等の無期転換ルールについて
- 2018.5 お客様の声
- 平成30年度税制改正のポイント
- 2018.4 お客様の声
- 保証付融資
- ビットコイン(仮想通貨)
- 2018.3 お客様の声
- 2018.3 お客様の声
- 株式会社 vs. 合同会社
- 確定申告に関する留意点
- 2018.2 お客様の声
- 税制改正等(給与所得控除)
- Indeedの利用
- 年末調整の流れ
- 進化する人事労務
- 新年明けましておめでとうございます
- 税制改正等 (配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し)
- 2017.11 お客様の声
- 消費税の軽減税率制度
- 2017.10.13 T株式会社 O.T様
- 枚方 会社設立・起業相談オフィス HPがオープンいたしました