相続時精算課税制度
(1)所得税の確定申告とは?
60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子供や孫に贈与する際に「相続時精算課税制度」という制度を使うことを選択することができます。相続時精算課税制度を選択した場合、それ以降の贈与については合計2,500万円まで贈与税が無税となります。 「相続時精算課税制度」とは、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫への生前贈与について、子・孫の選択により利用できる制度です。 贈与時には贈与財産に対する軽減された贈与税を支払い、その後相続時にその贈与財産とその他の相続財産を合計した価額を基に計算した相続税額から、既に支払った贈与税額を精算します。したがって、税金の支払いを相続発生時に繰延べしていると考えることもできます。
(2)暦年贈与
暦年贈与とは1月1日~12月31日の期間の贈与額の合計から110万円を差し引き、贈与税を計算する制度です。相続時精算課税制度の手続きをしなければ贈与税の金額を暦年贈与で計算することになります。
例えば、 20歳以上の子供が事業を始める際に、60歳以上の父親が開業資金として2,500万円を子供に贈与したとします。暦年贈与で贈与税を計算すると贈与税の金額は以下の通りとなります。
(贈与資金2,500万円-基礎控除額110万)×45%-265万円=810万5千円 |
仮に2,500万円を相続時精算課税制度を選択して贈与した場合、2,500万円を無税で贈与することが可能です。当初贈与額が2,500万円未満の場合は、贈与額の合計が2,500万円に達するまで贈与税は課税されません。ただし、相続時精算課税制度を選択した後の贈与は全て相続時精算課税制度を利用した贈与となります。暦年贈与に戻すことができないため留意が必要となります。
(3)相続時精算課税制度の節税効果
(2)で解説しましたが、相続時精算課税制度を利用すると合計2,500万円まで無税で贈与できますが、相続時に相続税が課税されます。したがって、節税効果は基本的にありません。ただし、贈与時から相続時までに時価が大幅に上昇する財産(土地等)を相続時精算課税制度で贈与する場合は節税になります。
例えば、5年後に時価が1,000万円から2,000万円に上がる財産があり、5年後に相続が発生すると仮定します。この場合、相続時には時価が2,000万円になっているため、2,000万円に対して相続税が課税されます。
一方、この財産を時価が1,000万円のうちに相続時精算課税制度を利用して贈与する場合は、相続時に時価が2,000万円になっていたとしても、贈与時の時価は1,000万円のため、1,000万円に対して相続税が課税されます。時価が上がることが確実であれば、時価が上がる前に相続時精算課税制度を利用して贈与することで節税することが可能となります。
受贈方法 | 相続税の課税価格 |
死亡時に相続でもらう場合 | 2,000万円 |
相続時精算課税制度でもらう場合 | 1,000万円 |
(4)相続時精算課税制度の手続き
相続時精算課税制度を選択する場合は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに相続時精算課税選択届出書を提出する必要があります。なお、提出時に受贈者と贈与者の「戸籍謄本」や「住民票」等の書類の添付を求められます。
(5)相続時精算課税制度のデメリット
相続時精算課税制度を選択する場合は、上記(3)にて記載いたしまいたが、節税効果が見込まれ、かつ、(2)で記載したとおり、相続発生時までは2,500万円までの贈与については、贈与税が発生しません。
このようなメリットがある一方で、相続時精算課税制度にはデメリットもあります。
① 110万円以下の贈与の申告必要 |
暦年贈与には110万円の基礎控除があるため、年間110万円以下の贈与であれば贈与税が課税されず、贈与税の申告をする必要がありません。しかしながら、相続時精算課税制度を選択すると年間110万円以下の贈与であっても贈与した年は申告手続きをする必要があります。
② 暦年贈与が使えなくなる |
相続時精算課税制度を利用して贈与した場合、それ以降の贈与は全て相続時精算課税制度での贈与となります。暦年贈与に戻すことはできません。暦年贈与は年間の贈与額が110万円以下であれば無税となりますが、相続時精算課税制度の場合は年間の贈与額が110万円以下であっても相続時に相続財産に加算され、相続税が課税されてしまいます。
③ 小規模宅地等の特例が使えなくなる |
「小規模宅地等の特例」とは一定の要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。相続時精算課税制度を利用して土地を贈与した場合、その土地に小規模宅地等の特例を適用することができません。
例えば、特定事業用宅地等(※)に、小規模宅地等の特例を適用する場合の限度面積は400㎡、減額率は80%です。仮に評価額が2,000万円で500㎡の特定事業用宅地等を相続した場合、400㎡は80%減額できますが、残りの100㎡は減額されません。
したがって、土地の評価額は以下の通りとなります。
1,000万円-1,000万円÷500㎡×400㎡×0.8=360万円
(※) <特定事業用宅地等に小規模宅地等の特例を適用するための要件> ・相続開始3年前よりも以前からその土地で事業を営んでいる。 ・相続人が相続税の申告期限まで事業を継続している。 |
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