事業譲渡の税務

現在M&A(Merger(合併)  and Acquisitions(買収)の略)や事業承継が盛んに行われております。今回はM&Aの代表的な手法の1つである事業譲渡の税務を中心に解説いたします。

(1)事業譲渡とは?

事業譲渡とは、会社がある事業の全部又は一部を譲渡することをいいます。企業全体を売買対象とする株式譲渡と異なり、譲渡対象を選べる点に特徴があります。

(2)事業譲渡の手続き

事業譲渡会社においては、事業の全部または重要な一部の譲渡を行うには株主総会の特別決議が必要ですが、それ以外の場合には取締役会の決議によって実行することが可能です。         

事業の譲受会社においては、それが重要な財産の場合は、取締役会の決議が必要になり、譲り受ける事業が他の会社の全部の場合には株主総会の特別決議が必要です。

☆財産等移転手続き

事業譲渡は包括承継である合併・会社分割と異なり、事業を構成する個々の財産・債務・契約ごとに個別に移転手続きが必要です。

不動産の場合、譲渡会社・譲受会社の当事者間では事業譲渡契約により所有権移転を主張できますが、第三者対抗要件を備えるためには、所有権移転登記が必要となります。

(3)事業譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡のメリット・デメリットは以下の点が挙げられます。

 

譲渡会社および株主

譲受会社および株主

メリット

  • ●事業・資産・負債のうち特定の一部
  • のみを取引対象にできる。
  • ●事業・資産・負債のうち特定の一部のみを取引対象にできる。
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  • ●取引上「のれん」が発生する場合、適正な金額であれば税務上償却が認められ、節税効果が得られる。

デメリット

  • ●競業避止義務を負う。
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  • ●個人オーナー株主の場合、株式譲渡益課税は20%(非公開会社の場合)であるのに対し、事業譲渡益課税は、法人税等実効率で30%程度となり、個人株主の手取りが減少するケースがある。
  • ●各種登録免許税、不動産取得税等の負担が生じる。
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  • ●許認可の継続が図れない。
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  • ●資金が必要となる。
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  • ●資産・負債の移転手続きに個々に対応する必要があり、煩雑である。

 

(4)事業譲渡価格

税務上事業譲渡価額を分解してみると、個々の譲渡資産・負債の時価評価額と「のれん」に分類されます(税制適格の組織再編の場合などは除く)。

譲渡対象となる資産・負債は、貸借対照表に計上されていないものであっても、税務上認識すべきものはそれを認識して時価評価します。以下のものは独自に時価評価します。

① 独立した資産として取引する慣習のある権利等                      ② 相続税法上の評価方法を参考にした超過収益力を背景としたもの

法人税法上で事業譲渡は、原則として(注)通常の資産の売買と同様に取り扱われます。事業譲渡が適正な時価で行われず、適正な時価よりも定額で譲渡した場合は、譲渡会社に寄付金が、また、譲受会社には受贈益が生じる可能性があります。また、適正な価格よりも高額で譲渡した場合は、譲受会社に寄付金の課税関係が生じる可能性があるため留意が必要となります。

(注)事業を現物出資して、組織再編税制の適格要件に該当する場合、もしくは完全支配関係にある法人間で事後設立をする場合などは、資産・負債の譲渡は簿価譲渡となり、譲渡損益は繰り延べられます。

なお、事業譲渡を行った場合、譲渡資産のうちに消費税法上で課税対象となるもの(棚卸資産、固定資産等)があれば、原則として消費税が課税されるため留意が必要となります。

(5)税務上の「のれん」

のれん」は、資産または負債の時価評価額と、事業譲渡価格との差額をいいます。「のれん」はプラスの金額のみならず、マイナスになることもあります(負の「のれん」)。「のれん」は税務上資産・負債の調整勘定として認識され、5年間で損金・益金の額に算入されます。

 

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