電子帳簿保存法の新たな要件緩和措置
令和5年度税制改正大綱に、電子帳簿保存の要件を一部緩和する措置が盛り込まれました。ここではその緩和措置のポイントを解説します。
(1)「優良な電子帳簿」の範囲の見直し 優良帳簿届出書を税務署長に提出し、保存要件を満たした優良帳簿として保存をすると、税制上の待遇を受けられるため、対応メリットがあります。その帳簿の記載事項に関して、修正申告又は更正があった場合の過少申告加算税の額は、通常課される過少申告加算税の額から当該申告漏れに係る所得税、法人税又は消費税の5%に相当する金額を控除した金額に軽減されます。 令和5年度税制改正大綱では、この優良帳簿の適用をうけるために保存が必要な帳簿の範囲を限定化・明確化しています。保存が必要な帳簿は以下の通りです。 1.仕訳帳 2.総勘定元帳
3.次に挙げる事項の記載に係る、1及び2以外の帳簿 (1)手形 (2)売掛金等 (3)買掛金等 (4)有価証券 (5)減価償却資産 (6)繰延資産 (7)売上、その他収入 (8)仕入、その他経費 つまり、従前の「すべての帳簿を保存せよ」という要件と比較して、2024年1月以降は対象が明確になり、対応への道筋が立てられたことになります。
(2)スキャナ保存制度の要件緩和
国税関係書類に係るスキャナ保存制度について、次の見直しが行われました。 ①国税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度、階調及び大きさに関する情報の保存要件の廃止 ②国税関係書類に係る記録事項の入力者等に関する情報の確認要件の廃止 ③相互関連性要件について、国税関係書類に関連する国税関係帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくとされる書類を、契約書・領収書等の重要書類に限定 これらスキャナ保存の適用要件をまとめると図表1になります。
図表1 <スキャナ保存の改正点>
(3)電子取引データ保存要件の緩和
保存義務者が、税務職員の質問検査権に基づく電磁的記録の提示または提出の求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件のすべてを不要とする措置について、対象者を従来は売上高1000万円以下という極めて小規模の事業者にしか適用されていませんでしたが、売上高5000万円までの事業者に拡大されました。これにより電子ファイル保存システムなどを導入してはコスト倒れになる規模の事業者への配慮が進んだことになります。 また、誰が保存したかの情報を記録する必要もなくなりましたので、とにかくどこかにまとめて保存しておき、税務調査の際に渡せるようになっていれば認められるという事です。
(4)電子取引データ宥恕措置の廃止と猶予措置の創設
2022年1月に改正電子帳簿保存法が施行されたものの、宥恕措置が実施され、2023年12月までは電子取引した取引情報の書面保存が一定の要件下で認められています。 この宥恕措置が当初の予定通り、2023年12月までで廃止される予定です。一方で、宥恕措置に代わり、以下全ての要件を満たす場合に、電子取引した取引情報の書面保存を認める”猶予”措置が2024年1月より実施されます。
①保存要件を満たして保存が難しい相当の理由があること、所轄の税務署に相当の理由があると 認められること ②税務調査時に要求されたデータのダウンロードの求めに応じること ③税務調査時に要求された書面の提示または提出の求めに応じられること
ただし、「相当の理由」が何かは未だ判明していません。したがって、2023年6月頃に公表が想定される一問一答で詳細が明らかになる見込みですので、引き続き情報を確認していきましょう。
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