災害にかかる税制のポイント
ここ数年、毎年のように大規模災害が発生し、甚大な被害をもたらしています。災害により被害を受けた場合の税制上の措置には、申告・納付期限の延長、納税の猶予等があります。
先月号に続き、税制上の措置の内容について説明いたします。
(1) 災害損失欠損金の取扱い
➀ 災害損失欠損金の概要
災害損失欠損金とは、災害のあった日の属する事業年度の欠損金額のうち、災害により棚卸資産や固定資産等について生じた損失の額をいいます。
② 災害損失欠損金の繰越控除
白色申告の事業年度に生じた欠損金(以下「白色欠損金」といいます。)は、原則として繰越控除の対象となりません。しかし、白色欠損金のうち災害損失欠損金額については、青色申告の事業年度に生じた欠損金(以下「青色欠損金」といいます。)と同様に翌事業年度以降に繰越控除することができます。
繰越控除できる期間は、青色欠損金と同じ10年です。また、中小法人等以外の法人において控除できる金額は、控除する事業年度の所得金額の50%が限度となります。
③ 災害損失欠損金の繰越控除の適用要件
災害損失金の繰越控除をうけるためには、下記の2つの要件を満たす必要があります。
(a) 災害損失欠損金の生じた事業年度の申告書に明細書(別表七(一))を添付すること。
(b)欠損金の生じた事業年度後の各事業年度について連続して確定申告書を提出すること。
④ 災害損失欠損金の繰戻しによる還付
災害があった日から1年を経過するまでの間に終了する事業年度において生じた災害損失欠損金額がある場合には、その事業年度開始の日前1年(欠損事業年度が青色申告の場合には2年)以内に開始した事業年度のうち、災害損失欠損金額に対応する部分の金額について、一定の適用要件を満たした場合には還付を請求することができます。
(2)納税の猶予
災害により被害を受け、国税を一時に納付することができない場合には、申請により納税が猶予されます。なお、猶予期間に対する延滞税は、全部又は一部が免除されます。
損失を受けた日に納期限が 到来していない国税 |
損失を受けた日に既に納期限が 到来している国税 |
|
要件 |
・災害により全積極財産のおおむね 20% 以上の損失を受けていること ・損失を受けた日以後1年以内に納付す べき国税であること |
財産について震災、風水害、落雷、火災等の災害を受けたことにより、国税を一時に納付できないこと |
猶予期間 |
納期限から1年以内 |
原則1年以内 申請により期間の延長ができる場合あり |
担保 |
不要 |
所定の要件を満たさない場合、猶予にかかる金額相当の担保が必要 |
申請手続 |
「納税の猶予申請書」を所轄税務署長に提出 |
「納税の猶予申請書」を所轄税務署長に提出 |
添付書類 |
・財産の種類ごとの損失の程度等の被害状況を記載した「被災明細書」等 |
・災害などの事実を証する書類 ・財産収支状況書 ・担保の提供に関する書類等 |
提出期限 |
災害のやんだ日から2か月以内 |
特になし(速やかに) |
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