年次有給休暇の時季指定義務

 ニュースレター第14号にて、働き方改革関連法について説明いたしました。

 当該関連法における主な改正の中で、労働時間の上限規制に関しては、中小事業主の皆様は令和2年4月1日が施工日となっており、1年間の猶予があります。従って、今回は、施工日が平成31年4月1日である、年次有給休暇の時季指定義務について詳細に説明いたします。

(1)年次有給休暇の基本的なルール

 労働基準法において、労働者は、①雇入れの日から6ヶ月継続して雇われている、②全労働日の8割以上を出勤している、この2点を満たしている場合、年次有給休暇を取得することができます。

 使用者は、労働者が雇入れの日から6ヶ月間継続勤務し、6ヶ月間の全労働日の8割以上を出勤している場合には、原則として10日の年次有給休暇を与える必要があります。対象労働者には、管理監督者や有期雇用労働者も含まれます。

 勤続勤務年数(付与日数)

 ・6ヶ月(10日)・1年6ヶ月(11日)・2年6ヶ月(12日)・3年6ヶ月(14日)

 ・4年6ヶ月(16日)・5年6ヶ月(18日)・6年6ヶ月以上(20日)

 なお、パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない労働者については、年次有給休暇の日数は所定労働日数に応じて比例付与されます。比例付与される条件は、所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下の労働者です。

 パートタイム労働者において、今回の時季指定の対象となる範囲は、週所定労働日数が4日の場合、継続勤務年数が3年6ヶ月以上の方、また、週所定労働日数が3日の場合は、継続勤務年数が5年6ヶ月以上の方が対象となります。

(2)年5日の年次有給休暇の時季指定義務

 これまでは、年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えることとされているため、労働者が具体的な月日を指定した場合には、時季変更権による場合を除き、その日に年次有給休暇を与える必要があり、使用者の取得日数について使用者の義務はありませんでした。

 しかしながら、今回の改正により、5日の年休を労働者に取得させることが使用者の義務となりました。年次有給休暇が10日以上付与される労働者が対象となります。

 使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させる必要があります。

(3)時希指定の方法

 使用者は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取する必要があります。 また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。

 なお、既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできなくなります。

 (※)労働者が自ら請求・取得した年次有給休暇の日数や、労使協定で計画的に取得日を定

    めて与えた年次有給休暇の日数(計画年休)については、その日数分を時季指定義務

    が課される年5日から控除する必要があります。

(4)年次有給休暇管理簿

 時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類「年次有給休暇管理簿」を作成し、当該年休を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存する必要があります。

(5)就業規則への規定

 休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労働基準法第89条)であるため、使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載する必要があります。

6)重い罰則

 年5日の年休を与えなかったり、就業規則に記載しなかった場合等については、罰則が科される可能性があるため、留意する必要があります。

 

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