金融検査マニュアルの廃止

 2019年5月に変わった元号の話題、働き方改革の関連法が順次施行される報道に紛れてしまっていますが、金融機関と取引しているほとんどの会社にとって、それらを超えるくらいのビッグイベントがあります。それは、金融庁の金融検査マニュアルの廃止です。金融庁に確認したところ、現在廃止を検討中とのことですが、今後注目される話題になるのではないでしょうか?

(1)金融検査マニュアルとは

 1990年代後半にかけて発生した金融危機を受け制定され、金融機関の現場では以降約20年間にわたり、同マニュアルに則った融資が推進されてきました。

 その結果、以下のような顧客本位ではない融資が一般的なものになりました。

  •   ● スコアリングに基づく機械的・画一的な債務者区分に依拠した融資
  •   ● 担保・個人保証・保証協会等を前提とした保全ありきの融資
  •   ● 毎月の返済を前提とした1年超えの長期融資
  •  金融機関の融資現場を支配してきた金融検査マニュアルが廃止されるということは、何を意味するのでしょうか?

  •  金融検査マニュアル下の約20年間は、上記のように良くも悪くも機械化やマニュアル頼み、かつ担保や個人保証等の保全ありきの時代でしたが、それ以前は違いました。

     金融機関は融資先である会社の事業を知り、資金繰りを確認したうえで、資金需要に合致したお金の貸し方を設計していました。

     また金融機関の現場担当者は、仕入先はどこで、販売先はどこで、工場や倉庫にどの程度の数量の在庫を抱えているのかを確認して、お金を貸すための稟議書を手で書くことが当たり前でした。

     金融検査マニュアル以前は、金融機関側が融資先である会社の実態を十分に把握したうえで、金融検査マニュアル下では考えづらかった「短期継続融資」「無担保」等のリスクを取って融資を行っていたのです。

     金融検査マニュアルの廃止は、上記のようなマニュアル以前の状態に金融機関が原点回帰していかなければならないことを意味します。

     下記「(2)金融時流に乗るために重要なポイント」を押さえたうえで、金融機関の現場の方と交渉を行えば借入の主導権を金融機関から自社主導に切り替えられるチャンスとなります。

     自社の借入環境を改善すれば、下記の可能性を飛躍的に高めることができます。

    •    借入金額が少ないと悩まれている企業では、借入金額や借入枠の拡大
    •    借入を受けることに問題がない企業では、より良い条件(当座貸越・低金利・無保証・無担

             保等)での借入

  • (2)金融時流に乗るために重要なポイント

  • 自社を知る

    ●債務償還年数、借入依存度、自己資本比率の数値はどうなっ

        ているのか

    ●法人のみの資産、収益力で借入返済が可能かどうか

    ●法人・経営者間の資金のやり取りが、社会通念上適切な範囲

        を超えないか

    ●自社の強みや今後の市場動向を理解しているか

    金融機関の格付けの

    考え方を知る

    金融機関が積極的に融資したい「正常先」に位置付けられてい

    るか

    適時適切な情報提供を

    行う

    ●税制上のルールに則った適切な決算書類を作成できているか

    ●資金繰り表、事業計画、在庫明細等を作りこんで開示できるか

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