棚卸資産
棚卸資産は、会社の商品・製品であり、非常に重要な資産であります。この棚卸資産の過剰な在庫により、経営が圧迫されている会社も少なくありません。棚卸資産の期末評価も重要な手続きの1つであります。今回は、棚卸資産について取り上げたいと思います。
(1)棚卸資産とは
法人税法・所得税法に定める棚卸資産とは、おおむね次のようなものとなります。
① 商品又は製品(副産物及び作業くずを含む)
② 半製品
③ 仕掛品(半成工事を含む)
④ 主要原材料
⑤ 補助原材料
⑥ 消耗品で貯蔵中のもの(貯蔵品)
①に関して、製品の製造工程で発生した原材料の残りくずであっても、売却価値あるいは利用価値があるものは棚卸資産に該当します。
②及び③は、年末においてまだ製造工程中の製品や、依頼を受けて建築中の未完成の建物などが該当します。例えば、建築中の建物については、投入した木材等の材料や、現場で働く従業員の賃金や外注費、燃料費等の経費も該当します。実務上も、税務調査において最も指摘を受けやすい項目になりますので注意が必要となります。
④は、例えば、家を建てるために購入した未使用の鉄骨や木材であり、⑤は、その鉄骨を腐食させにくくするために塗るペンキのようなものとなります。
⑥の貯蔵品は、交通機関の回数券や切手、文房具、従業員の作業服などが該当します。通常事業年度中は購入時に費用処理していますが、年度末に資産計上することが原則となっています。
(2)棚卸資産の取得価額
棚卸資産の取得価額は、本体の取得価額に棚卸資産を取得するために要した付随費用も含めます。
棚卸資産の取得価額は、以下の方法により算定します。
●購入による棚卸資産の取得価額=購入した棚卸資産の取得価額+付随費用
●製造による棚卸資産の取得価額=(製造等のために要した)原材料費・労務費・経費の額
+付随費用
付随費用とは、その棚卸資産を販売の用に供するために直接要した全ての支出の額をいい、直接付随費用と間接付随費用があります。
① 直接付随費用の例
引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税など
② 間接付随費用の例
買入事務・検収・整理・選別・手入れなどに要した費用、棚卸資産の移管費用(運賃、荷造費)、棚卸資産の保管費用(貯蔵費、保管費)など
なお、これらの間接付随費用の額の合計額が少額(その棚卸資産の購入の代価又は製造原価のおおむね3%以内の金額)であれば、取得価額に算入しなくても差し支えありません。
(3)棚卸の手続き
棚卸の手続きには、「帳簿棚卸」と「実地棚卸」の二つがあります。
帳簿棚卸とは、期中の棚卸資産の受払いを帳簿(商品有高帳等)にその都度記入し、その記録により年末の在庫を確認する方法です。
一方、実地棚卸とは、事業年度末に実際に現物を調査する方法です。
税法においては、一部の例外を除いて実地棚卸が要求されています。帳簿上の数量と実際の数量は、理論的には一致するはずですが、実際には盗難や紛失、記帳誤りなどにより一致しない場合もあるからです。また、帳簿上の数量よりも実際の数量が少ない場合、又は棚卸資産の劣化や陳腐化が認められるような場合は、その減少した金額を必要経費に算入することができるため、必ず実地棚卸をしていただきたいと思います。
(4)棚卸資産の評価方法
棚卸資産の金額の算出には、いくつかの評価方法があります。 例えば、届出を行い評価方法についての手続きを行わなければ、自動的に最終仕入原価法で計算することになります。しかしながら、業種・業態や在庫品に応じて、適切な評価方法を選ばないと、実際の利益との誤差が大きくなってしまうため留意する必要があります。また、1種類の棚卸資産につき、評価方法は原則として1つしか選択できません。今回は、最終仕入原価法を検討いたします。
最終仕入原価法とは、期末に最も近い日に取得した仕入単価を、期末棚卸資産の単価として計算をする方法です。価格変動が大きい場合には実際の取得価額との誤差も大きくなってしまいます。
<具体例>
5/1 ネジ 100個 6円/個で購入
10/1 ネジ 100個 5円/個で購入
上記の例で、50個を販売し、残りの在庫が150個だとすると、10/1の購入額の5円を用いて、棚卸資産額は150個×5円で計算します。
(5)評価方法の届出
最終仕入原価法以外の評価方法を選択したい場合、事業開始年度の確定申告書提出期限までに、管轄の税務署に届出をする必要があります。
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