総額表示義務について
今回は令和3年4月から適正な総額表示を徹底しなければならない総額表示義務についてお知らせします。
1 総額表示義務と特例措置の終了
課税事業者は、不特定かつ多数の消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合には、税込価格によらなければならないものとされています。一般にこれを「総額表示義務」と呼びます。総額表示義務は、平成15年度税制改正において創設され、平成16年4月日に施行されました。 その後、消費税率が、5%から8%へ、8%から10%へと二度にわたって引き上げられることとなった際、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保及び事業者による値札の貼り替え等の事務負担に配慮する観点から、消費税転嫁対策特別措置法によって、税抜価格の表示を容認する総額表示義務の特例が設けられました。しかし、消費税転嫁対策特別措置法は有効期限を定める限時法であり、総額表示義務の特例も令和3年3月31日に終了します。対消費者取引を行う事業者は、適正な総額表示を徹底しなければなりません。
2 消費者からの信頼の確保
消費税法には、総額表示をしない場合のペナルティは設けられていません(景品表示法については下記参照)。しかし、総額表示は、「レジで支払う総額を一目で分かるようにして、消費者の利便を向上させる」ことが目的です。消費者の利便性の向上は、顧客の企業に対する信頼につながるものと考えられます。総額表示が当然となる中で、プライスカードに税抜価格を表示し、支払の際に10%の消費税を加えた金額を請求すれば、顧客が戸惑うことは容易に想像がつきます。 特に、飲食料品と飲食料品以外の商品を取り扱う小売店や、テイクアウトとイートインとで支払金額が異なる飲食店等においては、複数税率を踏まえた分かりやすい総額表示を検討する必要があります。
3 総額表示義務の対象
総額表示義務の対象は、不特定多数の消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合です。商品に貼付される値札等、店頭における表示、チラシ広告、新聞・テレビによる広告など、あらゆる表示媒体が対象となります。 個別の顧客に提示する見積書や請求書等は、総額表示義務の対象ではありません。ただし、一般的には、値札や広告等に税込価格を表示している場合には、その税込価格を基に見積書や請求書等が作成されるものと考えられます。
4 具体的な表示方法と景品表示法
表示された金額が「税込価格である」旨の表示は必要ありません。税込価格に併せて「税抜価格」又は「消費税額等」を表示することもできます。ただし、一般消費者が表示されている税抜価格を税込価格と誤認するような表示は、景品表示法において、「不当な表示」として禁止されます。 違反行為が認められた場合、消費者庁は、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今回同様の違反を行わないことなどを命ずる「措置命令」を行い、違反のおそれのある場合には指導の措置を行うこととされています。 税込価格に併せて税抜価格を表示する場合には、一般消費者に誤解されることがないように、表示媒体における表示全体からみて税込価格が明瞭に表示されているか、注意する必要があります。
総額表示の具体例
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