2021年度税制改正における2021年の年末調整変更点
年末調整は毎年のように税制改正の影響を受け、改正されていきます。2020年には基礎控除額の引き上げ、給与所得控除額の見直しをはじめ、大きな変更がありました。 2021年の年末調整についても様々な変更がありますが、ここでは4つの点に絞って解説していくことにします。
(1)税務関係書類の押印義務の見直し
税務署長等へ提出する源泉所得税関係書類について、押印の必要がなくなりました。 扶養控除申告書をはじめ、各書類から氏名欄の「印」の文字が削除されています。 これは新型コロナウィルス感染症の影響で急速に促進したペーパーレス化、デジタル化の流れに沿った変更となります。 小さな変更ではありますが、記入者の手間が減ったこと、押印漏れでの返却再提出がなくなりましたので、手続きがスムーズになることが予想されます。
(2)年末調整を電子化するための事前申請の廃止
これまでは、年末調整申告書を従業員から電子データで回収する場合、事前に税務署へ「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、承認を受ける必要がありました。 しかし、この承認申請は「みなし承認」となっており、申請後運用できるまでに最大2ヶ月のタイムラグが生じたため、申請を手間と感じたりタイミングが合わなかったりと、電子化の機会を逃していた場合も少なからず見受けられました。 今回の改正では、2021年4月1日以降に提出する分から事前承認が不要となりました。これにより年末調整業務の電子化に向けて、さらにハードルが下がったことになります。
(3)住宅ローン控除特例の見直し
特別特例取得に該当する住宅を取得した場合の住宅ローン控除特例について、床面積や所得の要件を見直し、控除期間が延長されるものになります。
現行の制度では、控除期間は最長10年間ですが、消費税の8%から10%への引き上げに伴い、2019年10月1日~2020年12月31日までに消費税10%が適用されるマイホームを取得・新築して入居した場合は、控除期間が10年間から13年間に延長される特例措置が取られました。その後、コロナ禍の影響で入居が遅れた人も特例措置が受けられるよう「新型コロナウィルス感染症等に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」が制定され、控除期間13年の特例の適用期間が1年間延長されました。 さらにその後2021年度税制改正でも再延長され、当初は2020年12月31日までだった入居の対象期間が2年間延長され、2022年12月31日までとなっています。
住宅ローン控除の主な適用要件に加えて、2021年度税制改正による適用要件は以下の通りです。
・注文住宅の場合は、2021年9月30日までに契約締結済みであること。 ・分譲住宅・既存住宅・増改築は2021年11月30日までに契約締結済みであること。 ・2022年12月31日までに入居すること。 |
上記に該当する住宅に住んでいる場合、住宅ローン控除を13年受けることができます。
また、2021年度の税制改正においては、適用期間の延長だけでなく適用要件の緩和も行われました。これまで住宅ローン控除の対象となる住宅は床面積が50平方メートル以上の住宅に限られていました。 しかし、 2021年度の税制改正において控除期間13年間の特例措置が受けられる人については、40平方メートル以上の住宅も控除の対象になります。ただし、この床面積の要件の緩和が適用されるのは、その年の合計所得金額が1000万円以下の人に限られます。
(4)退職所得課税の見直し
社員が退職金を受け取った場合、退職所得に対して所得税が課税されます。 その計算式が見直されました。
<現行>
退職所得金額=(退職金額ー退職所得控除額)× 1/2 |
今回の改正で、勤続年数が5年以下の従業員については退職金額から退職所得控除額を引いた金額が300万円を超える場合、超えた部分については「×1/2」がなくなります。
<改正後>
①(退職金額ー退職所得控除) ≦ 300万円の場合 退職所得金額=(退職金額ー退職所得控除額) ②(退職金額ー退職所得控除) > 300万円の場合 退職所得金額=150万円(※1)+{退職金額ー(300万円+退職所得控除額)}(※2) (※1) 300万円以下の部分の退職所得金額 (※2) 300万円超の部分の退職所得金額 |
現在、勤続年数20年未満の場合、退職所得控除額は40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)となっています。この改正は、高額な退職金に対して税負担の平準化を図るために設けられた措置であります。 この計算は2022年分以降の所得税に適用されます。 2021年の年末調整には関係しませんが、年明けからの適用のため留意する必要があります。
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