土地建物の譲渡所得の計算
個人の確定申告にかかる譲渡所得について解説致します。 譲渡所得とは、土地、建物、株式、ゴルフ会員券、車、書画骨董、貴金属や宝石などの資産を売却することによって生ずる所得をいいます。 資産の種類や所有期間などにより、計算方法が違います。土地や建物、株式などの譲渡は申告分離課税で給与所得などとは別に計算されます。一方、車や貴金属、宝石などの譲渡は総合課税で給与所得などと合計して税金が計算されます。 今回は、不動産(土地・建物)を売ったときの譲渡所得の計算方法について解説します。
(1)譲渡所得の計算式 譲渡所得は、不動産の売却金額から、その不動産を取得・譲渡するためにかかった費用と、売却時に利用できる控除額を引き算して算出します。
各計算要素について、詳しく解説していきます。
(2)収入金額とは 収入金額は土地や建物を売ったことによって買主から受け取る金額で、まだ入金されていない未収入金や精算金も含まれます。いつの時点で譲渡の日になるかがポイントです。 譲渡の日は原則「資産の引渡しがあった日」ですが、「契約効力発生の日」を選択することもできます。どちらかの日に代金決済が完了をしていなくても、入金されていない未収入金も収入金額になります。
(3)取得費とは 取得費は、原則として資産の取得に要した金額に設備費や改良費を加えた合計金額です。贈与や相続などによって取得した土地や建物を売却する時は、原則として前所有者の取得費や取得時期を引継ぎます。前所有者の取得費が不明な場合は、収入金額の5%を取得費とすることができます。
不動産の取得費に含まれる代表的な項目は下記となります。
・土地や不動産の購入代金や建築費用
・購入時にかかった印紙税
・登録免許税や不動産取得税といった各種税金
・仲介手数料
・測量費、整地費
・設備費 etc.
土地建物の購入代金は、土地と建物に分けて計算するのが基本です。
土地については購入額、建物については購入額から減価償却費(取得から売却時までの間に経年劣化した価値)を控除した価額を用います。
(4)譲渡費用とは 取得費が取得(購入)時にかかった費用であるのに対し、譲渡費用は譲渡(売却)した時にかかった費用を指します。
不動産の譲渡費用に含まれる代表的な項目は下記となります。 ・譲渡時の売買契約書に貼付した収入印紙 ・借家人などを立ち退かせるために支払った立退料 ・土地の譲渡に際して土地の上にある建物を取り壊した時の取壊し費用とその建物の損失額 ・更に有利な条件で売るために支払った違約金 ・借地権を売るときの名義書換料など ・資産を売るために支払った仲介手数料など
(5)特別控除額とは 不動産売却で利益(譲渡所得)を得た場合は、一定の条件を満たすことにより、税金を減らすことにつながる控除や特例を利用することができます。利用できる控除・特例は6つあります。
特別控除の内容 |
特別控除額 |
収用等により土地建物を譲渡した場合 |
5,000万円 |
マイホ-ムを譲渡した場合 |
3,000万円 |
特定土地区画整理事業等のために土地を譲渡した場合 |
2,000万円 |
特定住宅地造成事業等のために土地を譲渡した場合 |
1,500万円 |
平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合 |
1,000万円 |
農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 |
800万円 |
(6)税額の計算 譲渡所得の計算の後は、分離課税の税金の計算となります。 譲渡資産の保有期間に応じて下記の通りとなります。 ■短期譲渡所得(5年以下) 39%(所得税30%、住民税9%) ■長期譲渡所得(5年超) 20%(所得税15%、住民税5%)
なお、長期譲渡所得のうち、所有期間が10年を超える居住用不動産を譲渡した場合には、下記の税率が適用されます。 ■譲渡所得が6,000万円以下の部分 14%(所得税10%、住民税4%)
■譲渡所得が6,000万円を超える部分 20%(所得税15%、住民税5%)
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