確定申告
2023年の確定申告について、所得税の計算書である確定申告書上の変更点や例年の税制改正のほかに、様式の変更や、事業所得と雑所得の新しい判断基準の追加などのうち主なもの数点を抜粋して解説します。
(1)確定申告書Aが廃止
2023年に提出する令和4年分の確定申告から、確定申告書Aの書式が廃止されます。昨年度までの申告においては、確定申告書Aがあり、確定申告書Bの簡易版のような位置づけでした。 サラリーマンで医療費控除などの適用を受ける人や、給与と年金がある人など向けに確定申告書Aという書式がありましたが、2023年からは1本化されます。したがって、提出の際はAとBの区別はなくなり、従来の確定申告書Bを基本とした「確定申告書」とのみ表示されます。 過去に毎年確定申告書Aを利用していた人が確定申告書Bを使うと、項目が多く煩雑に感じられるかもしれませんが、基本的に違いはありません。
(2)第5表(修正申告用)は廃止
2022年分の確定申告から修正申告の際に使用していた申告書第5表は廃止されます。修正申告の際は申告書第1表と第2表を使用します。修正申告とは税金を少なく納付していた場合に、税金を追加で納税するための申告です。これまでは第5表に修正前の所得や税額と、修正後の所得や税額などを記載していました。 過去の申告データはすでに税務署側が把握しているので、納税者の利便性に配慮して第1表の修正申告欄に修正前の税額と修正後の増加する税額を記載するのみとなりました。これも国税関係書類の簡素化の流れの一つです。
(3)住所変更の異動届が不要に
従来は所得税や個人事業者の消費税について、引越し等により納税地が異動した場合等に「納税地の異動又は変更に関する届出書」を提出しなければなりませんでしたが、2023年1月1日以後の納税地の変更等については、この届出書は不要となります。確定申告書の記載内容で確認できるからです。 また、異動後も継続して振替納税の適用を受けるには、従来は異動届出書に継続希望の有無を記載することとなっていましたが、異動届の提出が不要となりました。確定申告書の第1表に「振替納税希望」の記載欄が設けられていますので、該当する場合は、〇を入れておきましょう。〇を記入しなかった場合は新たに振替納税手続きが必要となります。
図表1
(4)確定申告書で公金受取口座の登録が可能に
公金受取口座登録制度は、金融機関の預貯金口座を1人1口座、給付金等の受取のための口座として、国(デジタル庁)に登録する制度です。口座の登録をしておくと、給付金の申請手続等において、口座情報の記載や通帳の写し等の添付等が不要になります。 確定申告書の第1表の「還付される税金の受取場所」に記載した預貯金口座を公金受取口座として登録する場合に、「公金受取口座登録の同意」に〇を記入します。また、既に公金受取口座の登録が済んでいる方が、所得税の還付を受ける場合、公金受取口座への振込みを希望するときに、「公金受取口座の利用」に〇を記入すると、「還付される税金の受取場所」に銀行名等を記載する必要がなくなります。なお、マイナポータルからも公金受取口座の登録が可能です。
(5)事業所得・業務に係る雑所得の判断基準の明確化
フリーランスの請負契約や給与所得者の副業などにおける所得区分は、基本的には事業所得か雑所得のどちらかとなります。事業所得も雑所得も、確定申告にあたって収入金額から必要経費を控除することができるという点では同じですが、青色申告特別控除や事業専従者給与の必要経費算入等、事業所得にだけ税金の計算方法において優遇された制度があります。 しかし、事業所得か雑所得かを判断するにあたっては、確定申告の際もその曖昧さが問題になっていました。こうした状況を踏まえて、2022年10月に所得税の基本通達が改正されました。 ポイントは、「業務に係る雑所得」が定義されたことです。これら取引について事業所得に該当しない場合には、確定申告書の雑所得欄の「業務」欄に区分して記載することになりました。
さらに、注意書きでは、これまで判断基準が曖昧だった事業所得と雑所得の判断基準について、「300万円」という明確な金額が提示されています。 帳簿書類の保存等がある場合は原則として事業所得となりますが、収入金額が300万円以下、かつ、本業収入の1割未満や、赤字が継続しているにもかかわらず赤字解消の取り組みをしていない場合は個別判断となります。これらの取り扱いは2022年分以降について適用されます。
図表2
参考資料:国税庁「所得税基本通達35-1」
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