贈与税と相続税(税制改正)
暦年贈与と相続時精算課税制度の概要と税制改正による改正点と影響について解説します。
(1)暦年贈与
受贈者(贈与を受けた者)ごとに年間の受贈額の合計から基礎控除110万円を控除して税率を乗ずる計算となっています。 受け取った額の年間合計額が対象となるため、いろんな人から110万円以内の贈与を受けても、その合計額で課税されます。そして、この贈与のうち相続開始前3年以内に行われた贈与については、相続財産に加算して相続税を計算することになっています。これを生前贈与加算と言います。これにより贈与税と相続税の二重課税になるため、すでに払った贈与税は相続税から税額控除を行います。これを贈与税額控除と言います。
暦年課税の仕組み
(※)扶養義務者相互間の生活費又は教育費に充てるための受贈財産 婚姻期間が20年以上の配偶者から贈与を受ける居住用不動産(限度:2,000万円) 等
出典:財務省 「贈与税に関する資料」より
<改正点> 2024年の贈与から生前贈与加算の対象期間が3年から7年に延長されます。ただし、延長した4年間の贈与のうち、100万円までは相続財産に加算されません。適用されるのは2024年以降の贈与からのため、2027年以降に発生する相続から持ち戻し期間が加算されます。 たとえば、2031年4月1日に亡くなった人の生前贈与加算は、以下のようになります。 ・2024年4月1日から2028年3月31日までに贈与した財産:100万円を差し引いた金額を持ち戻す ・2028年4月1日から2031年4月1日までに贈与した財産:全額持ち戻し
身近な人の死や自分の健康状態が不安になったときから暦年贈与を行おうという人がほとんどのため、亡くなる前7年以内という贈与の効果がなくなるタイミングが計れず、この制度を活用する人は少なくなると思われます。
(2)相続時精算課税
60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫が贈与を受けた場合に、2,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。2,500万円を超える贈与の場合、超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります。贈与者が亡くなったとき、贈与された財産は全て相続財産に加算され、相続税が課税されます(納付済みの贈与税は控除される)。 つまり、贈与者が亡くなる何年前の贈与であろうと、相続財産として持ち戻されるわけです。相続財産が基礎控除(3,000万円+(600万円×法定相続人の人数))以下の人で、贈与された財産が2,500万円以内であれば、相続税も贈与税もかかりません。 相続時精算課税制度は暦年課税との選択制であり、贈与者ごとに選択できます。たとえば、父からの贈与は相続時精算課税制度を利用し、母からの贈与は暦年課税の選択も可能です。ただし、一度選択したらその贈与者については暦年課税に戻せません。 相続時精算課税制度を利用するには、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日に必要書類を添付して、贈与税の申告書を提出しなければなりません。
<改正点1> 相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が加わります。2024年以降に相続時精算課税制度を選択した場合、年110万円までなら贈与税がかからないだけでなく、相続税もかからないのです。 また、改正前は少額の贈与でも申告が必要でしたが、年110万円までの贈与は申告も不要となります(年110万円を超えると期限内申告が必要)。 相続時精算課税制度では、贈与財産は全額持ち戻しでした。改正後は、基礎控除分が差し引かれるため、相続時精算課税制度を選択したほうがよいケースが増えると予想されます。
<改正点2> 相続時精算課税適用者が、特定贈与者から贈与により取得した土地又は建物について、その贈与の日からその特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に、2024年1月1日以後に災害によって一定の被害を受けた場合(その方がその土地又は建物を贈与日から災害発生日まで引き続き所有していた場合に限ります。)には、その相続税の課税価格への加算の基礎となるその土地又は建物の価額は、その贈与の時における価額から、その災害による被災価額を控除した残額とすることができます。
出典:財務省 「贈与税に関する資料」より
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