2024年提出(令和5年分)の確定申告の変更点
今年も確定申告が始ました。今回はインボイス制度導入後はじめての確定申告となるため、申告書や決算書、収支内訳書等について一部改正がなされています。ポイントとなる部分を抜粋し、決算書、収支内訳書の様式の変更点、及び株式の申告方法の改定を解説致します。
(1)「青色申告決算書」や「収支内訳書」の変更点
令和5年10月から消費税のインボイス制度が開始しました。消費税の納税をしている事業者に対しては「登録番号」が割り振られています。支払いを受ける事業者が、請求書や領収書に登録番号の記載をすることにより、消費税を納めている事業者であることを明確にします(消費税を納めていない免税事業者には登録番号はありません)。
インボイス制度は消費税の問題なのですが、個人事業者が確定申告書に添付することとなっている「青色申告決算書」や「収支内訳書」の記載内容に変更があります。
・青色申告決算書(一般用) 青色申告者用の「青色決算書(一般用)」には、令和4年分までは『売上(収入)金額の明細』『仕入金額の明細』欄そのものがありませんでしたが、令和5年分からは新たに設けられ、登録番号(法人番号)の記入欄(任意)が設けられています。
【引用】令和5年分 青色申告決算書(一般用)の書き方|国税庁
・収支内訳書(一般用) 白色申告者用の「収支内訳書」の、『売上(収入)金額の明細」『仕入金額の明細』欄には取引先名とその住所、取引金額を記載することとなっていました。令和5年分からはそこに登録番号や法人番号を記載する枠(任意)が設けられました。 なお、登録番号等を記入した場合は、その取引先の名称や住所の記載は省略できます。
【引用】令和5年分 収支内訳書(一般用)の書き方|国税庁
(2)株式の申告方法に関する改正
上場株式等の配当の課税方法には、確定申告不要、総合課税、申告分離課税の3つがあり、納税者が選択できます。令和4年分までは、所得税と住民税で異なる申告方法を選択できました。例えば、所得税では総合課税を選択して源泉徴収された所得税の還付を受けつつ、国民健康保険料の増額を避けるために住民税では申告不要を選択するということが可能でした。この場合、確定申告書の第二表『住民税・事業税に関する事項』の『特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要』に丸印を入れると「所得税は申告・住民税は申告不要」の意思表示ができていました。 令和5年分からは、この所得税と住民税の選択ができなくなり、所得税と住民税の課税方式を一致させることとなりました。そのため、令和5年分の申告書からは『特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要』欄が削除されています。
【引用】令和4年分 確定申告書|国税庁
これまでは総合課税を選択した場合、法人税で10%、住民税で2.8%の税額控除を受けられます。これにより、課税所得金額が900万円未満の場合、所得税を総合課税、住民税を申告不要として所得税に税額控除を適用する方法が、最も税率が低いとされていました。 令和5年からは、上場株式等の配当や譲渡所得については所得税と住民税の課税方式を一致させる必要があり、所得税で配当所得を確定申告する場合には、住民税でも確定申告しなくてはならなくなりました。 そのため、所得税を総合課税とする際は、住民税の税率についても考慮が必要となります。課税所得金額が695万円未満の場合、所得税「税率20% – 配当控除10% = 10%」、住民税「税率10% – 配当控除2.8% = 7.2%」、合計税率17.2%となり、申告しない場合の税率「所得税15% + 住民税5% = 20%」より低くなります。 結論としては、課税所得金額が695万円未満の場合には総合課税を選択するのが有利、695万円以上の場合は申告分離課税または申告不要を選択する方が有利となります。
(3)その他の令和5年分確定申告変更点
①確定申告書 第二表 親族欄の書き方の変更 ②納税地の異動又は変更がある場合の手続きが原則不要に ③申告書等用紙の送付が取りやめ、納付書の送付も見直しに ④確定申告書等作成コーナー マイナポータル連携の拡大 ⑤インボイス発行事業者の消費税の申告書に対応 ⑥申告書第四表 特定非常災害の被災者の方用の付表 ⑦(高所得者向け)財産債務調書制度と国外財産調書制度の改正
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