インボイス制度における立替払いの処理
インボイス制度下においては、一定の事項が記載された帳簿と適格請求書等の保存が、仕入税額控除の適用を受けるための要件になります。 ここで経費を立替払してもらう場合の請求書等の保存が問題となります。経費の支払先(請求書発行者)から立替払をした会社宛に交付された適格請求書をそのまま受領したとしても、これをもって請求書発行者から交付された適格請求書とすることはできない点に留意する必要があります。
(1)立替金精算書
例として、A社が支払うべき代金をB社が代わりに支払い、仕入先はC社と仮定します。この場合、C社が発行するインボイスはB社宛となり、本来の支払者であるA社は消費税の仕入税額控除を利用できないことになります。 そこで、B社はA社宛ての立替金精算書を交付し、インボイスのコピーと併せてA社へ送付します。A社は受領した立替金精算書とインボイスのコピーを保管することで、消費税の仕入税額控除の適用を受けることが可能です。 なお、国税庁のQ&Aでは、仕入のインボイスが多い場合、立替者側で保管することを前提としてインボイスのコピーの添付は不要としています。 立替金精算書のみで支払者が仕入税額控除を受けるためには、仕入先がインボイス発行事業者であるかどうかを明記する必要があります。加えて、仕入先の事業者名や登録番号、各適用税額の区分など、仕入税額控除を利用するために必要な情報も漏れなく記載しましょう。 インボイス発行事業者は、立て替えてもらった経費で仕入税額控除の適用を受けるには、立替者から立替金精算書の交付を受けなければなりません。立替金精算書を受領し保管することで、仕入税額控除の適用を受けられます。 では立替金精算書が必要なケース等について具体的に解説します。
(2)自社が仕入先へ支払う分を取引先で立替払いした場合
自社が仕入先に支払うはずの代金を、取引先が立替払いしたケースでは、仕入先が発行したインボイスの宛先が自社ではありません。そのため、取引先は立替金精算書をインボイスのコピーと併せて自社へ送付することで、自社は消費税の仕入税額控除を申請できます。 そのため、自社が適格請求書発行事業者で、代金を取引先に支払ってもらった場合には、取引先が交付した立替金精算書を受領しておく必要があり、反対に、取引先が適格請求書発行事業者で、自社が代金を支払った場合は、自社が立替金精算書を作成し取引先に渡す必要があります。
引用:国税庁 インボイス制度対応室資料
(3)従業員が経費を立て替えた場合
企業の経費を従業員が一時的に支払ったケースでは、インボイスの宛先は従業員名であって、企業宛でないことがあります。例えば、従業員がインターネット通販で業務関連の備品を購入した場合や、個人のクレジットカードで支払いをした場合などです。 従業員宛のインボイスでは、原則として消費税の仕入税額控除が適用されないため、立替金精算書を持って対処する必要があります。 一方、従業員が経費を立て替えた場合でも、立替金精算書が不要になるケースもあります。例えば、企業宛に発行されたインボイスがある場合、インボイスだけで消費税の仕入税額控除を利用できます。 また、従業員が受け取ったのが簡易インボイス(レシート等)の場合も同様に、立替金精算書は不要です。簡易インボイスでは、交付先の事業者の氏名や名称を記載しなくて良いため、宛先が企業でなくても消費税の仕入税額控除を受けられます。
(4)立替金精算書の記載内容
立替金精算書は、適格請求書が実質的には(立替払を行った会社ではなく)課税仕入れを行った会社(立替払を受けた会社)のものであることを明らかにするためのものであり、具体的な記載事項や様式などは明らかにされていません。課税仕入れを行った(立替払を受けた)会社に係る宛名、立替払を行った会社の名称、支払日、支払内容および支払金額等が記載されていれば問題ないと考えられ、主な記載要件は以下の通りです。
・適格請求書発行事業者の登録番号と名称 ・課税資産の譲渡などを行った詳細な年月日 ・課税資産の譲渡などに係る資産などの詳細な内容 ・税率ごとに区分されている課税資産の譲渡などの合計額および適用税率 ・税率ごとに区分されている消費税額など ・書類の交付を受ける事業者の氏名・名称
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