修繕費と資本的支出の判定
修理などに支出した費用が修繕費なのか、資産(資本的支出)なのか、税務上の扱いを確認しておきましょう。
機械や建物の修理などに支出した費用は、それが固定資産の取得にあたるかどうか、修繕費として経費(損金)処理できるか、資本的支出として資産計上するべきかの判断が必要になります。 修繕費であれば、その事業年度の費用として計上され、資産の取得や資本的支出であれば、法定耐用年数にわたって、減価償却費として資産計上します。その判断する際に、チェックしたいポイントは5つあります。
(1)かかった費用が20万円未満か
建物の修理や改良に要した費用が20万円に満たない場合は、修繕費として経費計上が可能です。修繕工事を実施した結果、資産価値が高まったり機能向上につながったりした場合でも、支出金額が20万円未満であれば全て修繕費になります。
(2)3年以内の周期で行うものか
修理や改良などをほぼ3年以内の周期で実行する場合、「周期の短い費用」として修繕費にできます。周期の短い費用に該当すれば、たとえ支出した金額が20万円以上だったとしても全額を修繕費として計上可能です。 一方で、20万円以上の支出を修繕費とする場合は工事を3年以内の周期で実施していると証明する必要があります。証明の方法は過去の工事実績の記録があれば、あらためて説明資料を作成しなくても問題ありません。過去の工事の実績がなくても、貯水槽の清掃・メンテナンスなどの費用はほぼ3年以内の周期で行われると判断されるため、経費計上が認められるケースがほとんどです。
(3)現状維持のための支出か
現状維持のための支出とは、建物の価値を保つための維持管理費用を指します。劣化等により使えなくなった固定資産を修理する等、資産価値を回復させるための支出が該当します。 例えば、退去が発生した際の原状回復費用や災害に伴い修繕が必要になった際の修繕費は修繕費として経費計上が可能です。
(4)資産価値や使用可能期間を増加させるか
通常の維持管理に必要な範囲の支出や、災害に伴い修繕が必要になった費用は修繕費として経費計上が可能です。ただし、修理費などで資本的支出か修繕費かが明らかでない費用がある場合は、「割合区分」による方法を用いて30%相当額は修繕費、70%相当額は資本的支出として計上します。 以下に該当する支出は修繕費として経費計上はできず、資本的支出として扱われます。 1.機能がグレードアップする 2.元のものよりも明らかに価値が上がる 3.使用可能期間が長くなる
(5)60万円未満か前期末取得価格の10%以下か
修繕費と資本的支出の区分が明らかではないときは、60万円に満たなければ修繕費として経費計上できます。注意点として、明らかに建物の価値を高めることにつながる場合は資本的支出になり、修繕費として経費計上はできません。 また、60万円を超えてしまう場合でも、支出した金額が前期未取得価額(固定資産の取得価額)の10%以下であれば全額を修繕費として経費計上可能です。前期未取得価格は前年度までに行った資本的支出があれば加算し、償却により減損している部分があれば差し引きます。「60万円基準」と併せておさえておきましょう。 修繕費か資本的支出かの判断基準は以上です。
(6)被災した資産に対する形式基準の特例
近年、自然災害が各地で頻発し、会社の資産が被災するケースも少なくありません。災害等によって資産が被害を受けた場合には、損傷部分の原状回復だけではなく、その資産の重要な構造部分にまで改修工事が及ぶこともあります。平時であれば、後者の工事部分は使用可能期間の延長または価額の増加として、資本的支出に該当することになるでしょう。 しかし、被災資産の原状回復費用は、あくまでも原状への復旧が第一の目的であるため、災害の場合には資本的支出と修繕費の区分を例外的に取り扱い、損金部分をなるべく多くする配慮が講じられています。 特に、災害時の復旧工事等のための費用は、どの部分が修繕費で、どの部分が資本的支出なのかが判然とせず、また、被災資産を修繕・補強することによって二次災害を防止する観点から、より寛大な措置になっています。 さらに、復旧工事では、回復のための工事と同時に、より強固な防災対策を施すことも考えられます。こうした工事で原状回復費用と資本的支出が混在し、これを合理的に区分できないような場合には、支出金額の30%相当額を修繕費とし、その残額を資本的支出とする簡便的な割合による区分処理が認められています。
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